第3話:イイネじゃ測れないものもある ページ11
ー喫茶ミシェルにてー
午前10:00
この日は土曜日で、仕事もないマーコとタロウは朝から喫茶ミシェルで暇を潰していた。
先ほどから、マーコは手元のスマホをぴこぴこと操作してはその画面をタロウに見せつけている。
「みて！！」
「・・・だから、さっきからなんでじじぃの写真ばっか見せてくんだよ。嫌がらせか？」
「違うよ！これ、わたしのインスタグラム！まいにち、欠かさず投稿してるの。」
「・・・はぁ？」
「知らない？ハッシュタグ今日のコーデって流行ってるんだよ。」
「じじぃのコーデなんて誰が興味あんだよ。イイネ、も3しかねーじゃねぇか。いや、3人もいいと思ってる奴がいることを感謝した方がいいか・・・どこのどいつだ、一体。」
「えーっと、マスターとうちのお母さんと、あと知らない外国人。」
職場の上司である、60を超えたおじいさんの写真を撮っては載せているらしいマーコ。
フォロワーは、喫茶店のマスターと母親と得体の知れない外国人のみというなんとも寂しい現実だ。
「お前のやることは、理解できん。」
そう言うタロウは、未だにスマホを持たずガラケーのままだ。
「かわいいけどなぁ、うちのエイジくん。」
「じじぃを君付けで呼ぶな、気持ち悪りぃ。」
数日後
職場のオフィスでデスクワークをこなすタロウ。
ひと段落ついたところで、隣の後輩が話しかけてくる。
「先輩、この動画みました？」
「んあ？なんだそれ。」
「いまバズってる動画ですよ！ツイッターとかで回ってきません？」
「いや、そういうのやってねぇからなぁ。」
「やらないんすか？SNS」
「あぁ・・・」
そう言われて浮かんだのは、先日のマーコの姿だった。
いいねの数が少ない、と指摘すると友達いないもん、と寂しそうにしていた顔がよぎる。
「あの、インスタグラムってどうやんの？」
後輩に色々と話を聞くと、まずはスマホを買ってこいと言われ外回りのついでに新しくスマホを手に入れた。
いまは、喫煙所で後輩に設定をしてもらっている。
「じゃ、インスタ適当にアカウント作りますよ？」
「おう、頼むわ。名前入れんなよ、俺って分かんない感じで頼む。」
「はいはい、なんすか？ネットストーカーでもするつもりですか？」
「？なんだそれ。」
「まぁいいです。はい、出来ましたよこれでアカウント作成完了です。あとは、テキトーに好きな人でもなんでもフォローすれば終わりです。」
「おー、さんきゅ。」
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作者名：サリー | 作成日時：2020年10月14日 17時
