完全な恋人

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ふわっと甘い香りがたつ。


距離の近さに、
壊れたおもちゃのように、
心臓がめちゃくちゃに打ち出した。


私の耳元に、唇を寄せた彼が、


「ほっぺに、ついてる。
パパロア」


早口にそう言った。


慌てて、拭き取る前に、
大倉くんの方が一瞬、早く、
私の唇の端に、
ハンカチをあてた。


「ごめんなさい、汚れちゃったんじゃ、」


「ええよ、そんなん」


新里さんは、
ずっと私たちのやり取りを凝視してて。


急に立ち上がって、
そのまま、駆け出して店を出て行ってしまった。


彼女の同期の女の子が、
キッと私を睨みつけて、
その後を追いかけてく。


「実は、あの子に付きまとわれて、困っててん。
はっきり出来て、ちょうど良かったかもしらん」


「あの子、って・・・
新里さん？」


「うん。
勘違いさせてもうてたみたいで、
俺も悪いとこあったかもやねんけど。
正直、迷惑してるっていうか・・・」


「そうなの？
彼女と大倉くん、
みんなお似合いだって言ってるみたいだけど・・・」


「周りの意見なんか関係ない。
俺はAさんがええねん」


今のは、告白？


男の人にそんな対象で見られたことなんてないし、
経験値では、よく分からない。


少女漫画や、ライトノベルに、恋愛ドラマ。

盗み聞きしてた、
同級生たちや同僚たちの明け透けな会話。


頭の中の知識を総動員させてるところに。


「・・・好き、言うてんねんけど。
気付いてや」


はっきりとダメ出しの一言が。

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