完全な恋人

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「何言うてんの？章大。
シスコンやねんから。
寂しいねんな？」


A姉ちゃんは冗談にして、
精一杯、無理して、笑ってくれたのに。


「そんなんちゃう。
分かってるやろ。
俺の気持ちなんか。
Aかって。
ずっと、俺を求めてたやろ？」


俺は昂ぶる気持ちのまんまに、
A姉ちゃんを、
この腕にきつく抱きしめてた。


これが最後やて覚悟して、
その唇に、口付けたのに・・・


一旦、感じてしもた温度は、
甘く、狂おしくて、

もう二度と、引き返されへん道を、
歩き出してしもたんやて、

はっきりと、感じた。


その日から、俺たちの、
誰にも言われへん、深く暗い罪は始まった。



ツアーで関西回る夜のホテル、

裕さんが出張の時は、
A姉ちゃんが東京の俺の部屋まで、
出て来て。


俺たちは密かに、会い続けて、

ありったけの言葉とキスだけで、
愛情を確かめ合うた。

絶対に気付かれたらあかん、
秘密の関係。

けど、一線だけは超えたらあかんて。

姉と弟やから、それだけは、

お互いを、どれだけ欲してても、

抑え続けてた。









密かな愛を交わし続けて３年半が過ぎた、
今から半年前。


週刊誌にいっぺんだけ、すっぱ抜かれてん。


【人気バンドギタリストの安田章大、
美人人妻と不倫？！

と思いきやの一転、

麗しき姉弟愛！】


【通い妻ならぬ、

人妻ながら、
東京まで通い詰める、
姉の献身的な支えで、

安田の、アーティストとしての今の活躍がある】


なんて書かれてあった。



裕さんは、多分、結婚した最初の頃から気付いてたと思う。


週刊誌に載るまでは、
無言を貫いてくれてたけど・・・


その記事が出てすぐに。


離婚届、A姉ちゃんやなくて、
俺に渡しに来はった。


出張のついでや、言うてたけど、
わざわざ、俺に会うために、
東京まで出て来てくれはったんやと思う。


「章大くん、Aんこと、頼むな」


裕さんは、俺らのこと、
知ってたはずやのに。


何度も何度も、
そう言うてくれた。


「ほんまに申し訳ありませんでした」


俺にはそれしか、言葉はなくて・・・

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