完全な恋人

エピローグ。 ページ28

２０２２年。春。


忠義くんや新里さんの証言が、
二転三転して、

裁判はなかなか決着がつかずに、
月日が流れた。


「僕が浮気を繰り返して、
彼女を苦しめたせいです」


最終的には、
忠義くんが罪を認める形で、
唐突に終わりを告げた。


被告人の婚約者は、
浮気を繰り返していたことで、
被告人を苦しめてきた。

追い詰められていた状態の罪で、
情状酌量の余地もある、と。



塀の中では、毎日、忠義くんに向けて、
手紙を書いた。



元々、真面目なだけが取り柄の私は、
模範囚として認められ、

すぐに、仮釈放されることになった。


久々の外の世界に踏み出すのは、少し怖い気もする。


施設育ちで家族は元々いないし、
仕事も失った。

今の私にあるのは、忠義くんへの愛だけ。


門をくぐると、
そこに、一台の車が停まっていて・・・


忠義くんが、壁にもたれて空を眺めていた。


「忠義くん、ただいま。
ごめんね、一人にして」


「ううん、毎日手紙くれたやん。
俺こそ、ごめんな。
記憶が曖昧で、
一番大切なAのこと、
ストーカーやと思い込んだりして」


「そんなこと、もういいよ。
忠義くん、怪我はどう？
痛かったよね。ごめんね・・・」


「Aを傷つけた罰やねんから。
それにもう、傷跡も消えかかってる」


忠義くんが、薄い半袖のシャツをめくって、
自分のお腹を見せてくれて。


季節が夏だと知った。


「もうどこにも行かないからね」


指と指を絡めて、
微笑み合う。


私たちはやっと、揃って、
完全な恋人になった・・・










完全な恋人。

おわり。

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