Story_16 ページ18
気づけば少しの間眠っていたらしい。
ゆっくりと目を開けば、整った顔が間近にあった。
焦りを隠せず距離を取ろうとすると、腰に手が回されていたことに気づく。
こちらからすれば、一種の拷問のようだ。
…それはそうと、何故クロロは私の事を警戒しないのか。
逃走を計画していることは既に知っているだろうに。
もし私が今、ナイフを持っていたなら彼の腹部は真紅に染まることだろう。
しかし、武器がなくたって殺す方法はある。
半分無意識のまま彼の首元に添えると、ひんやりと冷たい体温が感じられた。
それは彼が本当に人間なのか疑いたくなるほどに。
まさか死んでいないだろうな、と思いつつ首を包み込んでいると、目の前のクロロは瞼を上げていた。
｢殺すのか？｣
｢今クロロを殺して、此処から逃げ出すことが可能ならやるよ。｣
｢…俺はAにあまり好かれていないようだな｣
｢この判断は好きか嫌いかじゃなくて、私の逃走劇に必要か不必要か。だ｣
｢本当に変わっているな、お前は｣
ふ、と笑みをこぼす姿を見て、正直そんな気はしていなかった。
何となくだが、彼を殺すのは気が引ける。
…実行するとしても、彼の血で自分の手を汚したくはないし、他の団員に死ぬまで追いかけられることだろう。
｢…クロロ｣
｢何だ、A｣
｢私を逃がしてくれはしないのか｣
｢少なくとも今は、な｣
出会った時は、何を考えているのか全く理解出来なかったが、今ではその余裕ぶった表情を壊してやりたいなんて考える。
いつの間にか首に添えていた手は、彼の掌に収まっており、私の事を手放す気が無いことを察した。
｢じゃあ、逃げた場合は｣
｢まず連れ戻して…そうだな、鎖にでも繋いでおくか？｣
｢…洒落にならない言葉だ｣
｢お前が欲しいからな。仕方ないさ。｣
腰に当てられていた手の力がぐっと強くなり、軽く引き寄せられる。
｢それは"人"として…それとも"物"として、か？｣
｢…どうだろうな｣
彼はそう答えて、口角を上げた。
…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 46人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
のばら(プロフ) - 名無しさん» いえいえ。これからも応援してます！頑張ってください。 (2018年7月2日 18時) (
レス) id: efdbc48396 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - のばらさん» 初めまして、コメントありがとうございます。先程表記ミスの話を修正致しました。ご報告ありがとうございます。 (2018年7月2日 1時) (レス) id: 3c8a0d7009 (このIDを非表示/違反報告)
のばら(プロフ) - 初めまして。この作品とても面白いです。けど、途中からマオちゃんの名前が(美少女)という風に表示されていて、直して欲しいなって思っています(･_･; (2018年7月1日 21時) (レス) id: efdbc48396 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：名無し | 作成日時：2018年4月12日 1時
