9話 ページ40
翌日、私はみんなより早い時間に戦兎達の家に行って強化アイテム開発のお手伝いをした。
みんなが集まる頃、強化アイテムが完成して戦兎は髪を一部飛び跳ねさせて喜んだ。
「できたできた!マッドローグの強化アイテム!!」
『え?それ内海さんのなの?』
「あぁ!その名も、ハイパーエンプレス!!すごいでしょ!最っ高でしょー!天才でしょー!!!」
戦兎は嬉しそうに美空、紗羽さん、一海の耳元に口を寄せて大声で叫んだ。
そんな戦兎を見ながら内海さんは首を傾げた。
「私が使うのに、なぜエンプレスなんだ?」
「それは使ってからのお楽しみ」
『ゔっうん…で、私には?』
「お前にはない」
そう言われた瞬間、幻さんが私の横に来て「ガーン」という文字と悲しそうな顔をしている私の顔がプリントされたTシャツを見せてきた。
それのせいで悲しむにも悲しめない。
ていうかいつ撮ったのその顔。
「なんでAちゃんのはないの?」
私の気持ちを代弁してくれた美空に戦兎はニッと笑ってみせた。
「それも、使ってからのお楽しみだ」
「親父がパンドラタワーとその周辺の住民に避難命令を出した。戦うなら今しかない」
「さぁ、行こう!」
戦兎は上着を手に取って家を出る。
その後ろを私達は続いた。
パンドラタワーの前まで着けば、入口付近で悠長に私達を待っていたレックイーンと対峙する形になる。
レックイーンは私達を見るなり舌打ちをした。
「ニーサンのドライバー使う奴らと戦いたくないな。まだまだ吸収したい星があるから、ここで消されるわけにはいかないんだ」
「安心しやがれ、お前の相手は俺達だ」
一海はそう言ってドライバーを取り出した。
それを合図に戦兎、龍我、幻さんはドライバーを身につける。
「A、死ぬんじゃねぇぞ」
『龍我もね』
変身した4人に行く手を阻まれたレックイーンを確認して私と内海さんはパンドラタワーの中へ入った。
階段を駆け上ってエボルトがいるであろう頂上を目指した。
『前みたいにエボルトの刺客はないんですかね……』
「メカを操る脳がある人間が味方にいないからな。レックイーンのみだろう」
遠回しに自分がいないからだと言っているのに、内心少しだけ笑ってしまった。
自分がどれだけ有能なのか自覚しているのだろう。
自分のことを理解していることほど、頼りになるものは無い。
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作者名:Non | 作成日時:2020年8月8日 18時