7話 ページ38
龍我達がエボルトに向かっていくのを視界に捉えながら、私は反応しないその箱を見つめた。
一度光ったが、その後はいくらレバーを回しても白い箱はうんともすんとも言わず、そこに鎮座している。
『なんで…?』
私がそうしている間にも、龍我や内海さん、一海に幻さんはエボルトに圧倒されて今にも敗北寸前。
早く私も行かなきゃいけないのに、一向に反応しない白い箱を前にして焦りも最骨頂へと誘われた。
その焦りも相まってか、ドライバーの出力が最大に達してしまい身体に電流が走った。
そのまま変身が解け、その場に倒れてしまう。
全員が戦闘不能まで追い込まれて、為す術がなくなってしまった。
エボルトはレックイーンを抱き上げて、変身解除した私達を見下ろす。
「タイムリミットはすぐそこだ。セレモニーを、楽しみにしとくんだな」
そう言い残してエボルトはパンドラタワーに飛び立って行った。
戦兎に白い箱を渡して、美空に傷の手当をして貰った。
「やっぱり反応しなかったか……」
「やっぱりって、分かってて使わせたのかよ」
「ジーニアスの時は一度箱のままでエネルギーを送ったから、ボトルの姿に改造できた。だから今回もそうしないと改造出来ないことは分かってたから、渡したんだ」
『じゃあ今度こそ使えるってこと?』
「あぁ、すぐに作業に入ろう」
戦兎は白い箱を手にして机に向かおうとする。
でもその前に龍我が戦兎を掴んで自分と向き合わせた。
「ちょっと待てよ。Aが危険な目に遭うのを分かってて渡したってことかよ!」
「そういうことじゃない。これは少しのエネルギーでもいいように改良したから変身解除は想定外だった」
「Aが悪いって言いてぇのか?」
『龍我!私は大丈夫だから、戦兎を責めないで』
「……あ゙ぁ!」
龍我はイライラしながら出ていってしまった。
「A、すまない」
『いいんだよ。怪我もそこまで酷くないし、気にしないで。龍我のとこ行ってくるよ』
「いや、私が行く」
唐突にそう言ってきた内海さんに対してみんなの「え?」が綺麗に重なった。
そんな私達を気にも止めず、内海さんはメガネを触ると龍我のあとを追いかけていった。
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作者名:Non | 作成日時:2020年8月8日 18時