4章ー9 二度目の訪問 ページ46
それから間もなくして、わたしは暫くの休暇を得て再び我々国を訪れることとなった。急な申し出にも関わらずすんなり受理されたことに戸惑ったものの、気遣うように送り出してくれたレクトを見て、おそらく彼があれこれ動いてくれたのだろうと察する。良い部下を持ったものだと、もう何度思ったか分からない。
そうしてまた我々国へと足を踏み入れたわたしを迎え入れたのは、活気溢れる城下町の喧騒だった。前に訪れてからそれほど日は経っていない筈なのに、どこか懐かしくも感じる。わたしは立ち並ぶ店や行き交う人々を見渡しながら、賑わう通りを進んだ。 城門を潜って直ぐの辺りには女子供が多く見られたのに対し、ある程度進むと武装したいかにもといったふうの男たちがちらほら窺える。それからすぐに、聳え立つ大きな扉が目の前に立ち塞がった。ゾムさんが待ち合わせの場所に指定した場所はこの辺りの筈だ。
以前シャオロンさんと会ったときは、ここまで来ることはなかった。もしかすると無意識に避けていたのかもしれない。なんてぼんやりと考えながら、隙間なくぴったりと閉じられた正面扉を見上げる。そわそわと落ち着かない胸とは裏腹に、頭は冷静だった。
辺りを見回すが、ゾムさんの姿はどこにもない。このまま待っていても良いが、もしかすると話が通っている可能性もあるし関係者に訊ねてみても良いかもしれない。そう思ったわたしは、豪壮な扉の前に立っている二人の門番に目を向けた。思ったよりも自分が緊張していることに気付いたが、意を決して彼らの方へと一歩足を踏み出す。するとわたしが口を開くよりも先に、背後から掛けられた声にわたしは動きを止めた。
「なあ、あんた」
びくりとして振り返ると、そこに立っていたのは一人の男だった。短く切り揃えられた、光を集めたような金の髪。吊り上がった、澄んだ水の色は感情を灯さず真っ直ぐこちらに向けられている。そして見覚えのある赤と黒の奇抜なボーダーシャツに、わたしは目をぱちくりとさせた。いつぞやの視察の際にレンズ越しに見た男だと、すぐさま気が付いた。それほどに、彼の明らかに戦場にはそぐわない身なりは印象的だった。それから当時の事を記録していた事を思い出したが、どうしても名前までは霧がかったように出て来ない。
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遊麻(プロフ) - たこぱちょさん» コメントありがとうございます。応援本当に励みになります。スローペースではありますが必ず更新致しますので、引き続きよろしくお願い致します。 (2018年10月30日 10時) (レス) id: 783499c5d1 (このIDを非表示/違反報告)
たこぱちょ(プロフ) - 本当に面白いのでゆっくりで良いので更新頑張ってください! (2018年9月4日 17時) (レス) id: 6746a77822 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - kanonさん» コメントありがとうございます。想像以上にゾムさんが人気で恐縮です、出番までもう少しお待ちください!亀更新ですが頑張ります! (2018年8月3日 1時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
kanon - ゾムさんかっこよすぎてちょっと叫びました(笑)更新待ってますね。頑張ってください! (2018年7月11日 23時) (レス) id: e0a7914592 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - みんさん» 長らく更新していないのにコメントくださってとても嬉しいです。ありがとうございます。亀更新になりますが、お楽しみいただけると幸いです。 (2018年5月24日 17時) (レス) id: 175c4c32e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遊麻 | 作成日時:2017年12月7日 16時