4章ー2 ページ39
背後から振り下ろされる剣に、わたしは咄嗟に体を捩るが、一瞬判断が遅れてしまったが為に刃は腕を掠める。
「・・・くッ、」
鋭い痛みに顔を顰めるが、わたしはぐっと柄を握り締めた。血が流れる感覚がするが、今集中を切らすわけにはいかない。チャンスとばかりに迫り来る賊を押し返し、なんとか間合いをとった。
加勢はまだない。多少人数は減ったが、こちらもそれなりに体力を削られているため未だ戦況は変わらず。どう対処したものかと思考を巡らせていると、不意に近くにいた賊の一人が唸り声をあげながら倒れた。振り返ると、風に揺れる見慣れた色素の薄い髪が目に入った。
「Aさん!」
倒れた敵の後ろから顔を出したのは、部下であるレクトだった。彼はどこか焦ったような表情をしていて、どうやら切り付けられたところを見ていたのだろうと察する。それでも彼の方はきちんと片付けてから援護に来てくれたらしく、優秀な部下を持ったとわたしは小さく笑みを零した。そして心強い助っ人の登場に、安堵の息を吐く。
「レクト、ありがとう。後で聞くから今は目の前の事だけ考えて。わたしは大丈夫だから」
心配そうな目でこちらを伺うレクトだったが、私の言葉を聞いてしっかりと頷く。
そこからは早かった。背中はレクトに預け、ただ目の前の敵だけに集中して切り伏せて行く。命が危険に晒された状況に神経は研ぎ澄まされ、昂りに応えるようにただ体を動かした。
やがて人数が減ると、野盗たちはこちらに背を向け逃げの姿勢を見せ始める。こうなればこちらのものだ。住民の安全確保に回っていた部下達も戻り、わたしが直接手を出すまでもなく、相手は参ったと言わんばかりに武器を手放した。こうして捕えられた野盗たちは、この辺りの担当兵士の手に渡り、事は収束を迎えた。
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遊麻(プロフ) - たこぱちょさん» コメントありがとうございます。応援本当に励みになります。スローペースではありますが必ず更新致しますので、引き続きよろしくお願い致します。 (2018年10月30日 10時) (レス) id: 783499c5d1 (このIDを非表示/違反報告)
たこぱちょ(プロフ) - 本当に面白いのでゆっくりで良いので更新頑張ってください! (2018年9月4日 17時) (レス) id: 6746a77822 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - kanonさん» コメントありがとうございます。想像以上にゾムさんが人気で恐縮です、出番までもう少しお待ちください!亀更新ですが頑張ります! (2018年8月3日 1時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
kanon - ゾムさんかっこよすぎてちょっと叫びました(笑)更新待ってますね。頑張ってください! (2018年7月11日 23時) (レス) id: e0a7914592 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - みんさん» 長らく更新していないのにコメントくださってとても嬉しいです。ありがとうございます。亀更新になりますが、お楽しみいただけると幸いです。 (2018年5月24日 17時) (レス) id: 175c4c32e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遊麻 | 作成日時:2017年12月7日 16時