間章ー１ 傍観者のティータイム ページ35
外を吹く風は冷たく、カーテンの隙間から覗く白に思わず身震いをする。我々国の冬は厳しい。暖炉に寄りたくなるような寒さに、俺は思わず筆を置いて両手を擦り合わせた。
視界に映る一向に減る気配のない書類の山に、溜息をつきたくなる。散々後回しにしたツケを払わされているのだから自業自得なのだが、億劫なものは億劫だ。仕方なく再度筆を取ろうと手を伸ばした時、コンコンと執務室の扉が叩かれた。
「グルちゃん、入るで」
こちらの返事を待たずに開けられた扉の向こうからは、聞き慣れた声と共にオスマンが顔を覗かせる。緑の軍服に身を包んだ彼は、我々国の幹部であり、第一外交官も兼任する優秀な部下だ。
「ああ、オスマンか」
オスマンは俺の姿を視認すると、どこか上機嫌な様子でそのまま部屋へと足を踏み入れた。今にもスキップでも踏み出しそうな機嫌の理由を考えるよりも先に目に入ったのは、両手に抱えられた二人分のティーセット。しっかり洋菓子まで添えられている。
執務を後回しにできる大義名分を手に入れた俺は、嬉々として立ち上がると、すぐさまテーブルへと移動した。これ以上書類と見つめあっていると、どうにかなってしまいそうだった。
「気が利くな。今丁度休憩を取ろうかと思っていたところだったんだ」
「ほんまに？またそんないっぱい書類溜めて、サボっとったんちゃうん」
「酷い言い様だな。今日は真面目に執務に勤しんでいたゾ」
「･･･今日は、な。まあなんでもええけど、あんまりトントンの負担増やさんようにな」
オスマンはポットからカップに紅茶を注ぎながら、呆れ顔をする。ただ真実をそのまま伝えているだけだと言うのに、何故こうも信用されていないのか。不服に思いながらも、目の前に出されたカップを手に取った。湯気立つそれを鼻に近づけて香りを吸い込むと、目を閉じ暫しの幸福感を味わう。それから彼がソファに腰掛けるのを見てから、カップに口付けた。
「美味い」
「お褒めいただき光栄です」
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遊麻(プロフ) - たこぱちょさん» コメントありがとうございます。応援本当に励みになります。スローペースではありますが必ず更新致しますので、引き続きよろしくお願い致します。 (2018年10月30日 10時) (
レス) id: 783499c5d1 (このIDを非表示/違反報告)
たこぱちょ(プロフ) - 本当に面白いのでゆっくりで良いので更新頑張ってください！ (2018年9月4日 17時) (レス) id: 6746a77822 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - kanonさん» コメントありがとうございます。想像以上にゾムさんが人気で恐縮です、出番までもう少しお待ちください！亀更新ですが頑張ります！ (2018年8月3日 1時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
kanon - ゾムさんかっこよすぎてちょっと叫びました(笑)更新待ってますね。頑張ってください！ (2018年7月11日 23時) (レス) id: e0a7914592 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - みんさん» 長らく更新していないのにコメントくださってとても嬉しいです。ありがとうございます。亀更新になりますが、お楽しみいただけると幸いです。 (2018年5月24日 17時) (レス) id: 175c4c32e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊麻 | 作成日時：2017年12月7日 16時
