３章ー２３ ページ31
タイムリミットはもうすぐそこまで来ているようで、これが彼と過ごす最後の時間になるだろう。遥々遠方から訪ねてきたのだからゆっくりしていけばいいのにと遠回しに伝えたが、やんわりと断られる。当然だが幹部ともなれば色々と忙しいらしい。
陽が落ち始め少し肌寒くなったきた頃、わたしとひとらんさんは食事を摂るために食堂へと足を踏み入れた。一般の官吏が利用できる大食堂よりも煌びやかな装が施されたそこには、既にわたしたち以外の姿があった。
「えらい仲良うなっとるやん」
談笑しながら入室した私たちを待っていたのは、外交を終えたらしいオスマン様。その顔にはうっすらと疲労が滲んでおり、どこか面白くなさそうに言い放った。
ひとらんらんが「お疲れ」とひらりと片手を上げる。その隣でわたしは小さくお辞儀をして、各々席に着いた。ひとらんさんはオスマン様の隣に、わたしはその正面に。それから間を置かず前菜が運び込まれ、グラスにはワインが注がれた。
「随分長引いたね」
「せやねん、思ってたよりも長引いたわ。僕もこの辺見て回りたかったのに」
オスマン様は心底残念そうに肩を落としながら、蟹のリエットに舌鼓を打つ。その隣で「またの機会にね」とひとらんさんが声を掛けた。出来ればその機会は当分来なければいいのだけれど。わたしは内心悪態をついた。
「でも、なんとか食事できるだけの時間が取れて良かったわ。僕も君とゆっくり喋ってみたかったし」
「…はあ、光栄です」
「あれ、今日頷いてくれたん違ったっけ？僕の事はマンちゃんでええよ」
「……」
「贔屓はよくないなあ。それとも今更撤回するん？」
こういう時の彼は心底楽しそうで、尚且つとても悪い顔をしている。先ほどまで沈んでいたと思ったらこれなのだから、彼は根っこの部分から外交官向きなのだろう。残念ながらわたしは盤面をひっくり返す駒ひとつ持ち合わせていないため、渋々「……分かりました、オスマンさん」と頷いた。しかし彼はどこか不満げな様子で、じとりとこちらを見つめる。マンちゃんなんて、口が裂けても呼びませんよ。という意思を込めて、こちらも負けじと見つめ返す。結局ひとらんさんに「その辺りにしておきなよ」と仲介されるまで、静かな攻防は続いたのだった。
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遊麻(プロフ) - たこぱちょさん» コメントありがとうございます。応援本当に励みになります。スローペースではありますが必ず更新致しますので、引き続きよろしくお願い致します。 (2018年10月30日 10時) (
レス) id: 783499c5d1 (このIDを非表示/違反報告)
たこぱちょ(プロフ) - 本当に面白いのでゆっくりで良いので更新頑張ってください！ (2018年9月4日 17時) (レス) id: 6746a77822 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - kanonさん» コメントありがとうございます。想像以上にゾムさんが人気で恐縮です、出番までもう少しお待ちください！亀更新ですが頑張ります！ (2018年8月3日 1時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
kanon - ゾムさんかっこよすぎてちょっと叫びました(笑)更新待ってますね。頑張ってください！ (2018年7月11日 23時) (レス) id: e0a7914592 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - みんさん» 長らく更新していないのにコメントくださってとても嬉しいです。ありがとうございます。亀更新になりますが、お楽しみいただけると幸いです。 (2018年5月24日 17時) (レス) id: 175c4c32e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊麻 | 作成日時：2017年12月7日 16時
