３章−２１ ページ29
来客室でオスマン様が放った言葉を同じように投げかけてきた彼に、わたしは「ええと」と言葉を詰まらせる。仮にも我々国の幹部である彼に、そんな無礼を働いていいものかーーとそこまで考えて、ゾムさんや鬱さんたちの顔が頭を過ぎる。彼らとも良い交友関係を築けているし、公の場で無ければこちらももう少し歩み寄ってもいいのかもしれない。
「では、Aと。あなたのことはなんと呼べば？」
「そうだな･･･ひとらん、ひとらんらん、なんでもいいよ。あいつらにはげどちゃんと呼ばれることもある」
「ならひとらんさんと呼んでも？」
「勿論だよ、A」
ひとらんらん様、改めひとらんさんと名前を呼び合う。彼は満足げに頷き、すぐそばの干し草の俵に同じように腰掛けた。どうやら馬との触れ合いには満足したらしい。
穏やかな沈黙が落とされる。馬屋に吹き抜ける柔らかい風を浴びながら、わたしはぼんやりと外の景色を眺めた。最近は忙しかったから、こうやって息を抜ける時間は久しぶりかもしれない。
「Aは、どうしてこの仕事に？」
「･･････、」
ひとらんさんが問いかける。わたしは外を眺めたまま、どう答えたものかと頭を捻った。
正直に言えば、"地位が欲しかったから"である。考えなしに仕えている訳では無いが、だからといって特に思い入れがある訳ではない。長く務めれば愛着も湧くし環境だって悪くは無い、けれどこれは答えにはならない。馬鹿正直に彼に伝えるのはなんだか憚られて、わたしは口を噤んだ。
「じゃあさ、教えてよ。Aの好きなもの」
「え？」
「そうだな、･･･俺は動物が好き。可愛いし、癒されるよね。君は？」
「わたしも、動物は好き。あんまり触れる機会はないけど」
「なら今度うちに来た時は、俺が育ててる子達を見せてあげる。人懐っこいし、すぐに君とも打ち解けるよ」
そう言って、ひとらんさんの目が細められる。彼がどういう意図で尋ねてきているのかは分からないが、顔の大半を隠してしまっている大きなマスクの下ではきっと優しい表情をしているのだろう。そう思えるほどに柔らかい声色だった。
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遊麻(プロフ) - たこぱちょさん» コメントありがとうございます。応援本当に励みになります。スローペースではありますが必ず更新致しますので、引き続きよろしくお願い致します。 (2018年10月30日 10時) (
レス) id: 783499c5d1 (このIDを非表示/違反報告)
たこぱちょ(プロフ) - 本当に面白いのでゆっくりで良いので更新頑張ってください！ (2018年9月4日 17時) (レス) id: 6746a77822 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - kanonさん» コメントありがとうございます。想像以上にゾムさんが人気で恐縮です、出番までもう少しお待ちください！亀更新ですが頑張ります！ (2018年8月3日 1時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
kanon - ゾムさんかっこよすぎてちょっと叫びました(笑)更新待ってますね。頑張ってください！ (2018年7月11日 23時) (レス) id: e0a7914592 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - みんさん» 長らく更新していないのにコメントくださってとても嬉しいです。ありがとうございます。亀更新になりますが、お楽しみいただけると幸いです。 (2018年5月24日 17時) (レス) id: 175c4c32e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊麻 | 作成日時：2017年12月7日 16時
