不釣愛 [藤原愁] (ページ31)

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第二十八話　県大会予選(一日目)　再、会ページ31

No side

県大会予選。一日目の今日は、個人戦が行われる。
騒めきと緊張の中にある微かな期待。皆、自分の最高の射をするべく稽古を積んできた同士だ。敵味方関係ない尊敬の念を込められるスポーツはそう多くない。

ふと、騒めきに切れ目ができた。一同視線の先には黒と紫のお揃いのジャージを身に纏った集団がいる。更に注目されるは背中の文字

＿＿＿＿＿＿＿桐先高校弓道部

彼らが注目されているのは、単に強豪校だからだけではない。今大会の男子団体メンバーの半数以上が1年生だったからだ。

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千「其処の二人、もしかして中学の時愁と同じチームだったやつだろう？確か鳴宮君と竹早君だっけ～？」

万「本当だ！三人立ちで大前だった奴だ。確か県大会決勝で早気になって自滅したんじゃなかったっけ？」

千「あれから早気は治ったの？…ま、俺らも会短いから気にすることないよ！」

万「千兄～会が短いのと早気は別物だって～」

千「あぁそっか～」

千／万「「ぷぷぷぷ…」」

海斗「なんだ、てめぇら！出来損ないのドッペルゲンガーみたいに並びやがって！！もっとホラーな顔にしてやろうか！」

静弥「止めるんだ小野木！」

愁「千、万。その辺にしておいた方がいい」

愁「本村先輩。二人は、彼らが俺の元チームメイトだということに気づいて、挨拶してくれていたようです」

本村「チームメイト？」

愁「中等部の同期ですよ。先輩も、ご記憶ありませんか？・・・久しぶりだね、静弥、湊」

湊「…愁」

静弥「久しぶりだね、愁」

愁「…静弥は相変わらず、まだ湊の騎士を務めているのかい？湊だけじゃなく、君まで違う高校を選んだと知らされた時は驚いたよ」

静弥「相変わらずは愁の方だろう？この前も、二十射皆中を決めたって聞いたよ。高校生になっても、貴公子の名は健在だね」

愁「…そんな俗称に興味は無いな。湊」

愁は湊の腹部に手を当てる

愁「傷の具合は？」

湊「・・・もう、全然大丈夫だ」

愁「そう、良かった。・・・湊、俺は必ず帰ってくると信じていたよ。また湊の射を、俺に見せてくれ」

そう言って愁は部員の元へ去っていった。
風舞メンバーには沈黙が流れる。

その光景を後から来たAは見ていた。今でも愁は、湊に特別な感情を持っている。愁が弓道を続けるにあたって、湊は無くてはならない存在なのだ。

『愁…』