不釣愛 [藤原愁] (ページ28)

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第二十五話　懇親会ページ28

愁side

選手選抜の後、本村先輩と佐瀬先輩に誘われて千、万と5人で一緒に夕食を取ることになった。歴代弓道部員ご用達の店で、店内はアールヌーボー調の家具やドームのランプといった品々で埋め尽くされている。選抜メンバーの懇親会を兼ねていたが、2年生の椛島先輩と湯島先輩は不参加だ。

並べられた料理をいただき、各々会話をしていた矢先、佐瀬先輩が口を開いた。

佐瀬「そういえば、今日の選手選抜だが…いくら校内試合とはいえ、双子は飛ばしすぎだ。後ろの奴がついていけなくなる」

確かに千と万はかなりの早引きだ。会をもう少し保った方が良いと思うが、それが彼らの射形に合わないのなら、必要ない助言だ。

千「え～ゆっくり引くと当んないんすよ～」

万「俺は千兄の真似をしているだけで～す」

佐瀬「癖だからすぐには直らないとは思うが、あれじゃあ早気の一歩手前だ。お前ら、調子の良い時と悪い時とで差が顕著に出るタイプだろ？」

千「そんなこと言ったら佐瀬先輩だってそうじゃないですか～。練習中はそうでもないのに、試合になるとバンバン中っちゃうんだもんな～ずるいや」

佐瀬「練習中は中らなくて悪かったな！」

佐瀬先輩は本番に強いタイプで、どういう訳か、試合になるとよく中たる。武藤先生が「運の無いやつもいらない」という言葉の裏には「運のあるやつは使う」という意味が込められており、それは佐瀬先輩を指していた。

本村「1年生が3人も出場となると、他の部員からも妬まれますからね。僕からもフォローを入れておきますので、今まで以上に稽古に励みましょう」

千「はーい、部長！」

万「します！」

千と万が元気に返事をすると、本村先輩は俺の方を向いた。