第十八話 先輩 ページ20
愁side
桐先高校の図書室はとても広く、居心地も良い。蔵書も充実している上に自習用の個室も、グループ討議用のミーティングルームも完備している。また、カフェも近くにある。
？？「ここ良い？」
一人の男子生徒が俺の向かいの席を指さして問う。青いネクタイをしているということは3年生だ。
愁「えっと…」
望月「弓道部3年の望月龍也。偶々藤原君を見かけてね。外部生だから知らないと思うけど」
愁「そうでしたか。よろしくお願いします。それで、何か用でしょうか？」
望月「いや別に？」
愁「では何故相席を？」
望月「親睦を深めようと思って」
成程。普通はこうして交友関係を広げていくものなのか。
愁「明日からの部活でお会いできると思いますが…」
望月「いや、二人で話がしたかったんだよ…貴公子様」
彼の目は澄んだ空の様だが、どこか海のような深さを感じる。まるで俺を試しながら会話をしているようだ。
愁「その俗称で呼ばれるのは、あまりいい気分ではありませんね」
龍也「そういえば、朔晦詩音と仲の良い可愛い子がいるだろ？高槻さんだっけ？二人が教室で話しているのを見かけてね。随分面白い内容だったよ」
朔晦とAが？おそらく昨日の件でAが相談しているのだろう・・・
俺に話してくれればいいのに。やはり遠慮しているのか。
愁「・・・盗み聞きは良くないですよ」
龍也「人聞きが悪い。偶々聞こえただけだ」
愁「そうですか。では、これで失礼します」
俺はその場を離れた。何故か彼と話していては良くない気がしたからだ。彼は何かを隠している上にAに近づけたくないオーラがあった。
彼の青い目とあの雰囲気、どこかで見覚えがある。一体どこだっただろうか・・・
昇降口の近くに来た時、Aの後ろ姿が見えた。それと同時にスマホが振動した。
画面を開くとAから用が済んだとメッセージが来た。
しゃがんで靴を取り出しているA。ひょっとして俺に気づいていないのか？
『はぁ〜』
Aは大きなため息をついた。
愁「溜息なんて珍しいね」
『うわぁ！？・・・愁！』
愁「おっと、驚かせてしまったかな？」
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作者名：ｉ | 作成日時：2023年3月21日 22時
