286羽 ページ39
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多少の気まずい空気が流れる中で一番に口を開いたのはそこへ駆けつけた天童だった。
「Aチャン!まさか、こんな形で共闘することになるなんてね〜。」
おどけつつもその声色に含まれる本心は読めない。昔からそうだった。
「ほんとですね。」と軽く笑って見せると、「よろしくな。」と瀬見がひとこと。大平も山形や川西もそれに続き、白布も「よろしく。」とだけ告げた。
話してみて気楽になった心をもち、彼らに「はい。」と返事を返す。
「よろしく頼む。」
静かに呟いた牛島に対しても、柔らかい笑みを向けながら「お願いします。」とだけ言葉を送った。
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「A。」
皆で話しながら作戦を立てている中、牛島に不意に名前を呼ばれた。首をかしげて「はい?」と牛島を見つめ返すと、彼からひとこと。
「向こうは誰を出すと思う。」
その問に目をぱちぱちとしばたかせる。そんな彼に、天童はいつも通りの駆る調子で言った。
「若利く〜ん、それはいくらなんでも難しいんじゃない??」
瀬見も天童に共感するように「そうだぞ若利。」と言ったが、依然として牛島はAだけを無言で見つめる。
「……そうですね。まず蛍……月島と工、黒石くんは確定かと。月島は若先輩のスパイクを止めたこともありますし、工は技術は一番高いしバランスもいい。黒石くんもリベロとして優秀なので、若先輩対策で入るでしょう。
あとは……国見くんとかでしょうか。工と一緒でレベル高いですし、頭きれるのでチームの要になるかと。
他はすみません、どうとも。けどSに初っ端から黄金川クンを入れる可能性は薄いんじゃないでしょうか。まだ技術も拙いので、様子見の可能性が高いかと。」
そこまで言うと、「分かっちゃうのね。」と呆れと関心を含んだ笑みを浮かべながら天童は言った。「流石だな〜。」なんて笑う大平たちには目もくれず、Aと牛島はお互いに目を合わせたままで居る。
「……そうか。俺はどういう風にプレーすればいい。」
「……白布先輩、変わらず確実なときやピンチなときに若先輩に集めるスタイルでいきますか?」
「そうだな。俺はそれで言いと思うけど。」
「と、いうことで。上がったボールを確実に決めてください。」
「分かった。」
そんな会話で、昔の懐かしさにさいなまれる。この異様な圧、プレッシャー、緊迫感に怯えると同時にそんな姿に惹かれてしまったのも事実。
「(なつかしいなあ……。)」
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さりあ(プロフ) - 古森くんと佐久早くんの番外編のお話がちょっと見当たらないのですが番外編part2にありますか??お話がすごい気になります!! (2021年7月31日 1時) (レス) id: bfe73c86d0 (このIDを非表示/違反報告)
柿の種梅しそ味(プロフ) - すみません。なんか…話数違いません?なんか重なってる… (2019年12月23日 16時) (レス) id: c64161dde0 (このIDを非表示/違反報告)
赤兎リエ輔(プロフ) - ざらめ煎餅さん» とーっても嬉しいお言葉ありがとうございます!面白いだなんて畏れ多い…!凄く励みになります…!御期待、応援に添えるよう精一杯頑張らせていただきますので、どうぞこれからもご愛読いただければ幸いです(*´ω`) (2017年4月2日 20時) (レス) id: 9a5c590feb (このIDを非表示/違反報告)
赤兎リエ輔(プロフ) - tenipuri3rdさん» やっと続きを更新できます・・・!お待ちいただいてありがとうございました!楽しみにしていただけているようでなによりです(*´ω`) 恋愛のほうは正直行き当たりばったりですのでなにもかもが未定ですwそれでもこれからも楽しみにしていただければ幸いです! (2017年4月2日 20時) (レス) id: 9a5c590feb (このIDを非表示/違反報告)
ざらめ煎餅 - すっごく面白いです。更新頑張って下さい(`_´)ゞ (2017年3月31日 1時) (レス) id: 233c1dd62c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤兎リエ輔 | 作者ホームページ:http://nekomoti
作成日時:2016年12月23日 21時