am09:00 ページ15
『さて皆さん、採点の結果が届きました』
"ライ麦畑でつかまえて、読んでなかったでしょ?"
"正直言うと、僕はコックに100回ビンタかましてやりたかったね"
"頭硬いね優等生"
中村の脳裏には問スターと戦った時の手応えがハッキリと蘇っていた。
『ではまず英語から……ヌルフフ。E組で1位、学年でも1位』
その言葉を聞いた途端、中村は確信と不安の狭間で揺れる。私か、否か。
『中村莉桜! 100点!!』
『ふっふ〜余裕っしょ〜』
この緊張は誰にも見せない。見せてたまるものか。ライ麦畑でつかまえての主人公くらい青臭く振舞ってやる。
余裕そうに笑う中村莉桜に対比するように、本校舎では瀬尾智也が学年3位、95点の答案用紙を放心状態で握りしめていた。
『完璧です!!』
感激に触手を震わせ答案用紙を引き渡す殺せんせー。得意げに莉桜は笑った。
『触手1本、忘れないでよ? 殺せんせー』
『もちろんです!』
殺せんせーは触手の1本に破壊予約済みと書かれたご丁寧な旗を立て、相変わらずにやにやと嬉しそうに笑った。
生徒全員に答案用紙を返却し、皆が一喜一憂する。その中で次の返却を一際気にしそわそわとする生徒が1人、神崎有希子がいた。
『次は国語です!』
『E組で1位、神崎有希子!! 残念ながら学年1位は浅野くんでした……ですが大変素晴らしい結果です!』
『2位、か……』
思わず零れた独り言。握りしめた答案には96点の赤数字。落としてしまった4点は惜しいと思うし悔しくもある。それでも何となく、悔いは残らなかった。肩の荷がスっと降りた気がした。
榊原蓮は3位。神崎との2点差は数字と違って大きく悔しいものとなった。
『続けて返します、社会科!!』
ここでごくりと唾を飲み込んだのは我らがクラス委員長の磯貝悠馬。
"アフリカの開発会談の回数"
"議会のCEOの名"
些細なことだったかもしれないが、その一つがとても大きかった。アフリカの貧困問題に興味を持ったことから知れたこと、殺せんせーに連れていかれた現地で学んだこと、そのどれもが磯貝をあの時助けた。
『E組1位、磯貝悠馬! 学年では……』
貯められたその間、磯貝は冷や汗をかいた。強敵を抑えて1位になれるのか、ほんの数秒が数時間に感じられた。
『おめでとう! 浅野くんを抑えて学年1位です!』
『よっしゃ!』
97点、学年1位。目指していた所にたどりつけた磯貝。
それに反し浅野学秀95点、学年2位。返された答案に浅野は目を見開いた。
9人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:天泣tenkyu | 作成日時:2019年6月14日 22時