am11:20-excuse- ページ13
『クラスのこととか、君には少し聞きたいことがあるんだけど……まあここでする話ではないね』
『ふふ、所詮私はE組ですし』
榊原は聞きたいことがあるようだったが、連れを気遣ってか遠慮した。Aも自身に興味を無くしてくれないかと遠回しに謙遜するが、それを許さないのは浅野だった。
『タウゼントは、俺と同じ学力がある。だから気にするな』
『?!』
驚いたのは榊原だけでなくAもだった。
なぜ自分を擁護するようなことを言うのか、浅野自身のためなのか、それとも……わからない。
『それは……』
浅野が他人を気遣うようなことを言ったという事実と浅野と同レベルの学力という中身に言葉を失った榊原は、理解を諦めたように目をふせた。
『今はいい、今度学校で聞かせてくれ』
『……ああ』
それじゃあ、と言って別れると、しばらく無言が続いた。
『僕と一緒にいるのがただのE組の生徒という認識だと困るのでな……ただそれだけだ』
浅野自身本当は卑下するなと言いたくなってしまったのかもしれない。後々説明が面倒くさくなると自分の行動にうんざりしつつ、何故か嬉しそうに笑うAに眉を顰める。
『なんで笑う』
『いや、クーデレというものを始めてみたので』
『は?』『いえ、なんでも』
その後二人は書店で各々本を購入し、北口まで共に帰った。帰路でひたすらゲーテの哲学書について語っているのは傍から見ると気持ち悪いレベルで頭の良い会話だった。
その後には期末試験の問題を復習し始めたが、そらで全て暗記していた浅野も、それに全解答するAもやはり常人ではなかった。約一体はAIであるが。
『今日は楽しかったです、ありがとうございました』
『別に、まあまたどこかへ行ってもいいかもな』
『!』
もう少し意地を張るタイプかと思っていたが、好敵手は例外なのか? Aは冷静に分析し、浅野の頭脳だけではなく浅野自身に興味が湧いてきた。
道を別れる前に、Aは振り返る。
『そういえば、私はE組の学力向上にはなんの関与もしていません。全て彼らの能力ですので、もし何かあっても私との関連を疑わないでください』
明日E組が勝つと予測し、仲間の手柄を奪いたくないと縋るように呟くA。相変わらずの難しそうな顔で浅野はそうかとだけ返し、Aを一瞥すると静かに角の向こうに消えた。
『……あなたは良い好敵手ですよ』
小さくそう呟いたのは、きっと聞こえなかっただろう。
7月21日am08:30/答案返却→←am11:15-encounter-
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作者名:天泣tenkyu | 作成日時:2019年6月14日 22時