＋ ページ9
手足を縛るような倦怠感と痛みにもだえながら、私は五感を澄ます。
窓が開けられる音、部屋に流れ込んでくるすがすがしい朝の香り。
ワルツのような鳥のさえずり。
雨音のような、こすれあう木々の音。
自分の息遣いと、リュウが動く音。
心配するように覗き込む、側近であるガレスの紫の瞳。
小瓶の触れ合う音、独特な薬のにおい、いるであろう二人や侍女の気配。
先ほどまでの地獄とは打って変わった陽だまりのような心地よさ。
そのすべてを感じ取り、私は気持ちが和らぎ、緩んだあくびをする。
早く眠らないとだめね、と。
ひたすら知っている詩を思い浮かべる。
そのまま知らぬうちに、私は再度眠りについた。
次に意識が完璧に覚醒したときには、すでに一日が経っていた。
星が降る音が聞こえそうな夜に、整わない呼吸。なかなか下がらない熱。
すべての原因は毒だった。
療養という形で部屋に閉じ込められ、私はしばらく自分でできていたことさえ人に任せることになってしまった。
時間が経てばあともなく治ると言われたけれど、私の指先の皮膚はただれてしまっていた。
だから自分では何も出来ない。
毒殺未遂、その言葉は私の胸に重くのしかかった。
菓子職人が私に渡したあの白い小箱、リボン部分に仕込まれた微細な針から心毒性の毒が入り込んだようだった。一部の地域で狩猟の際に矢毒として使われる危険な樹液だ、確実に殺しに来ている。
ガレスはいつも黒手袋をはめていたから問題なかったけれど、私は素手であのリボンに触れてしまった。
いまだ毒薬投与を終えていない自分に都合よく、あの菓子職人は取り入ったのだろうか。
頻繁に自分にお菓子をくれていたのは嘘だったのか、騙すためだけのものだったのか。
自分を殺すためだけに菓子職人になったのか。
＿＿それとも誰かがあの人を誑かしたのだろうか。
毒を中に入れていなかったのは単に毒味があるから。
もしかしたら、はめられた可能性もあるかもしれない。
……分からない、それでも私を害そうとする人を生かしておくことはできない。
今頃つかまっているのだろうか、どちらにせよ、もう裁き終わった後だろう。
あの時、私は毒を危険量摂取していたそうだ。
毒薬投与も終えていない私がなぜ死ななかったかというと、リュウがすぐに診断しその場にあった薬草で的確な処置を施してくれたかららしい。
詳しく話されたわけではないが、とっさの行動を取ったリュウのおかげで今私は五体満足で生きている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 81人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (
レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです！( ＾ω＾ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：天泣 | 作成日時：2017年11月29日 22時
