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これ以上醜態は見せるなと自身に言い聞かせ、息を吐く。
目元と頬が赤く染まった姿が、彼の瞳に映るのがわかる。
彼は視線をそらし、そうですかと一言だけ言って手当てを始めた。
丁寧にいたわりながら、ガラス細工にでも触れるように、私の手にそっと薬を塗る。
この方には泣いていたことを言いふらされないようにしなくては、そう考えた時、彼の声が静かに響く。
「何か……困ったことがあったら」
薬を塗り終え、私の手のひらに包帯をそっと巻いている彼が恐る恐る口を開いた。
「おれ……私が話を、聞きます、よ」
自分の前で片膝をついているその姿が、記憶の中にいるお御伽の騎士に重なった。
姫の手を取り、手の甲に口付けを落とす騎士の姿に。
童話の絵のように鮮やかに、世界が弾けて色がつき、煌々と輝いて見えた。
真っ直ぐ見つめられ、私は思わず俯いてしまう。
今までに聞かされた陳腐で歯が浮くような、夢見がちでロマンチストなどんな
「……っ」
今度は別の意味で頬が赤く染まり、羞恥に視界が潤む。
私の視線は彼の手元を、そして再度集中して俯いているその顔をたどる。
作業を終えて彼が顔を上げたので、そらすのも間に合わず目があった。
透き通る瞳が、お互いの瞳を捉えて離さない。
お互いの息遣いも掻き消されるほどに、自身の心臓が早鐘を打つ。
生まれてこのかた動いているという認識がなかった心臓が、たった今動き出したかのように鳴り始める。
「……そんな、大層なことが出来る訳じゃないですけど」
長くも短い時間、お互いに視線を逸らせずにいた。
「ありがとうございます、話を聞くって言ってくださって、嬉しかった……です」
私は小さな照れを誤魔化すように、ぽかんとしている彼から目をそらす。
ただそれもなんだかいたたまれなくなって、ちらりと彼の方を様子を伺うようにして見ると、そこには花の咲いたような笑みがあって、胸がどきりと高鳴った。
「また、会いに来てよろしいですか？」
彼は驚いたように目を丸くすると、小さく返事をして別の扉から帰っていった。
私は一人ぽつんと薬室に取り残された。
はい、とたった一言。
小鳥の羽でくすぐられているようなくすぐったい気持ちに、ほう、と息を吐き出し頬を抑える。
琥珀色の思い出の中に沈む花緑青の瞳が彼と重なる度に、私はたまらない気持ちになる。
十二歳の冬。
花緑青に溺れて
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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (
レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです！( ＾ω＾ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天泣 | 作成日時：2017年11月29日 22時
