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「あの……これ、よければ」

そう言っておれが差し出したのは小さな小瓶。
こういうのは用意しておくべきかと思って、なんとなく予想していたからあらかじめ買っておいた。
花を模したガラスの蓋に小さい丸い瓶。
中にある若草色の飴玉を反射して、瓶がAの瞳みたいに輝く。

王族ならなんでも買えるだろうと何を渡すか迷った結果、昔Aが好きだった飴菓子を用意した。
今も多分好きだと思う。
よく飴食べながら来るから。
口に入ってるからバレないとか思ってるんだろうけど、そのうち喉に詰まりそうだからやめた方が良いと思う。
まあ、とにかくこういうものは消え物だし扱いやすいだろう。

「わあ、綺麗! これは、砂糖細工の花かしら」

爽やかなミントの飴玉と砂糖で出来た甘い花びらや花が小さな瓶に一緒に入っている。
可愛らしいから買うとき少し恥ずかしかったけど、喜んでくれたならよかった。

Aが小瓶を眺めている間、おれはもらった栞を眺めた。
わずかに光を通す真珠を溶かしたような百合の水晶が揺れ、淡い虹色の影ができる。
なんか、Aみたい。
陽の光を透かして髪が虹色に反射する時の光景とよく似ている。

その栞を光に透かして見とれていると、Aがこっちを覗いた。

「お気に召しましたか?」

「はい……綺麗です」

「良かった。そろそろリュウのお昼休みも終わりますわね、私は帰りますわ、飴菓子ありがとうございました」

小瓶を大事そうに手で包み、小さく手を振り出ていくAに、おれも手を振り返した。

ふわりとAに合わせて風がそよぐ。

そうだ、この香り。

百合の香り。

この城は彼女たち王族がいるからか、高貴な百合の香りがいつもするんだ。

それを自覚すると、既に慣れたはずの薬草の香りがいつもより鮮やかにおれの中ではじけた。

「……仕事」

饒舌には話せないけど、理解力もきっと他とはずれてるけど、でも、彼女が大事な友達だってことは前から変わらない。

重いのかな。

でも知らない、ほかの付き合い方なんて。

しようとも別に、思わない。

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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです!( ^ω^ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天泣 | 作成日時:2017年11月29日 22時

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