＋春のワルツ＋ ページ25
クラリネス王国。
とある春の日の午後、王宮にて。
おれの名前はリュウ。
最年少宮廷薬剤師としてウィスタル城に仕えさせてもらっている。
ここでおれはある人と友達になった。
人づきあいがうまくできないおれの唯一の友達。
この国の第一王女、A・ウィスタリア・クラリネス改めA。
本当は古い友達だけど、本人は多分そのことを忘れている。
友達になり直した、というのが変だけど一番合っていると思う。
今も昔も友達に対する正しい接し方はいまいちわからないけど。
そしてその人物は今、なぜかおれの机の下で寝ていた。
そもそもの事の発端は、おれがなるべく長い間仕事をしようと机の下に寝具を入れるようになってからだ。
その事を知っていたAが興味本位で入ったのだと思う。
ただ一国の王女である以上この状況はあまり良いものではない。
昔みたいにお転婆で少し懐かしいけど。
起こした方が良いかな……。
「……A王女、起きて、起きてください」
ゆらゆらと枕を揺さぶってみると、案の定彼女はすぐに起きた。
のそりと起き上がり二、三度目をパチパチと瞬かせおれのことを見た。
「あれ……あ、そうだ。寝てみたんだった」
失礼だけど、冬眠から覚めた動物の生態と似ている。
昔も温室で遊んでいる時に椅子で寝ていたことがあったな。
一回寝ると起きないから大変だった。
「その、意外と狭いところって落ち着きますね」
少し恥ずかしそうに告げるAに呆れつつ、確認した時計は既に二時を指し示していた。
「……執務に戻らなくていいんですか？」
「実は今日の分は全部もう終わらせたんです。今日は聖ヴァレンティオンデーですよ？」
生憎と家族は父さんだけだったしそういう行事ごととは縁がなかったように思う。
薬室長は去年もチョコレートをくれたけど。
ただ、Aが話題に出すということはもしかしたら……くれるということだろうか。
こういう行事好きだよね、ほんと。
Aはずっと抱きしめていた革装丁の植物図鑑から、白百合を模した栞を取り出した。
「花は枯れてしまうので、これを差し上げますわ」
リュウはよく本を読んでますしと笑うA。
「ありがとうございます……嬉しいです」
思わずそんな言葉が零れた。
今も昔も友達に対する正しい接し方はいまいちわからないけど。
彼女と過ごす時間はいつも楽しかった。
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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (
レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです！( ＾ω＾ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天泣 | 作成日時：2017年11月29日 22時
