閑話-花緑青の正体- ページ21
おれには昔、妖精と遊んだ記憶がある。
白銀の雪のような髪に淡い蒼の瞳をした美しい少女。
北の城に隣接する西の街オリオルドに住んでいたおれは、父親に連れられて時たま東の街リリアスに行っていた。
学者の集う学問街のある通り。
父が仕事を片付けているあいだ、一般人の立ち入りが可能な温室に入り浸ることが多かったおれは、そこで彼女に出会った。
周囲の大人の腰元までしかない背丈で、ついていきながらおれにはわからないような難しいことを話していたのを覚えている。
学者と話す植物の妖精かなにかかと思った。
そんなものこの世にいないとはわかっていたけど、そう思わせる様な光景だった。
雪に溶けそうなくらい淡くて綺麗な彼女の姿が目に焼き付いた。
学者の集まりの中には父の仕事の同業者もいた。
薬学の館の人達か、となんとなく眺めていると、少女がこちらに気づきこちらに駆けてきた。
「貴方お名前は？」
「……リュウ」
なんで突然聞いてきたのだろうとぼうっとして答えると、彼女は手を差し出してきた。
「私の名前はA！ 貴方の瞳が綺麗な色だったから、妖精だと思ったの。ごめんなさい」
苦笑いを浮かべながら言う彼女に、おれも同じ。そんな言葉が零れていた。
人と話すのがいささか苦手なも、彼女にたやすく絆されてしまった。
家族やここに来た理由を根掘り葉掘り聞かれて、すっかり長いこと話し込んでいたおれたちはまた会う約束を取り付けた。
お互いに会える機会は少なくて、あの温室で話すようになってから、約束をして会いに行くことは互いに特別なものとなっていた。
それから少しして、少女がこの国の王女だということを知った。
問いかけてみれば、彼女はあっさりとそれを認めた。
お忍びだったのなら、もう会うことは無いのかと言おうとすると、それに被せるようにまたあってくれるかと聞いてきた。
「会いに来るよ、Aが王女でも、そうでなくても」
「……っありがとう！」
不思議とはっきりと答えられた。
泣きそうになる彼女をあやしていると、彼女は自分のことを話してくれた。
薬学に興味があって城からよくリリアスの学問街に来ていること。
身分のせいもあって同い年の対等な関係の友達をつくれないこと。
「リューくんは大事な友達だから！」
「……うんおれも、だから、また遊ぼう」
それからおれは少しでもAに追いつきたくて、父に薬学を教えてもらうようになった。
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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (
レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです！( ＾ω＾ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天泣 | 作成日時：2017年11月29日 22時
