十一話 ページ12
霧の中を抜けると、椅子やテーブルがあるところについた。ここで、私は殴られるのだろうか。
そう思う。だけど、だけど、さっき霧に入るときに握ってもらったときに、すごく優しく触れてくれた。
もしかしたら、なんて思うけれとわすぐにその考えを止める。
期待しても何も良いことがない。
オールマイトだった、そうだった。
霧のような人がこちらに近寄ってくる。
殴られるのではないかと思い、体が震えだし、体を固め目を瞑る。これが、一番良いんだ。
けれど、さっきの手の人のよう「痛みはこなかった。
片方ずつ目を開けると、手の人がしゃがんでいた。
思わず後退りするが腕を掴まれる。
「餓鬼、なんで怯えたんだよ。」
そんな疑問の答えは自分の中でも見つかっているからすぐに答えられる。
『…殴られる、からです。だから、怖いっ…』
そう告げると手の人は首を掻き始める。
もしかしたら、私の解答が望んでいたものと違ったのかもしれない。だったら、どうなるんだろうか。
「…はぁ、俺はお前が攻撃してこない限り手は出さない。だぁー！黒霧。この餓鬼みとけ。」
手の人は、そう言って扉の奥に歩いていく。
何か悪いことをしたのだろうか。でも、何かわからない。私の態度が気に食わなかったのだろうか。
そんなことを考えていると霧みたいな人が近づいてくる。
「私は黒霧。先ほどの人は、死柄木弔です。貴方の名前は？」
一番答えにくい質問だけれど、いつも呼ばれていた呼び方を答えれば良いだろう。私はあの人たちが呼んでくれるのを名前にしていた。
『…わか、ない、ですけど、私は人形です。』
いつ殴られても良いように警戒しながら答える。
私が答えると、黒霧様はよくわからないけど顔を顰めたように見えた。霧だからわからないけど。
「まぁ、名前は大丈夫です。本題ですが、貴方はヒーローが嫌いですか？」
私がヒーローのことが嫌いか…ね。嫌いですか？って聞くのだから彼らは、ヴィラン側なんだろう。
なるべく痛い思いはしたくないため、正直に答える。
『嫌い、です。1ヶ月。路地裏の影から、ヒーローのこと、見てました。だけど全員偽善者にしか見えなかった、です。オールマイトも助けてくれなかった、です。』
私が言い終わると彼の纏う雰囲気が、さっきよりも和らいだ気がする。
癪に触る答えじゃなくてよかった。
「そうですか。それは良かったです。」
わからないけど、彼が笑ったように私は見えた。
【ヴィランの世界】
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