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滝夜叉丸くんはやっと顔を上げて答えた。
「…だ、だってそれは、Aさんの一番近くにいるのが伊作先輩だからというか、お目付け役というか、保護者というか…」
驚いて、「ほ、保護者…」と意味もなく言葉を反芻してしまう。
「とにかく!Aさんに何かあったらまずは伊作さんにと!」
(え、ええ…)
困惑してしまうが、滝夜叉丸くんの表情は真剣そのものだ。
しかし、
「…はははは!」
文次郎さんが声を上げて笑った。
見ると、文次郎さん以外も六年生は皆可笑しそうにそれぞれ笑っている。
私と四年生の二人はぽかんとしてしまう。
「伊作が保護者か。はあ、うん、確かに周りから見ればそうだな。Aの用心棒みたいな存在だよなあ」
文次郎さんは伊作さんを見ながら明るく笑った。
「いつの間にそんな…」
留三郎さんに「気づいてなかったのか?」と聞かれ、頷く。
「今だって伊作、落とし穴に落ちたって聞いて一瞬嫌そうな顔してたもんな!」
「ちょっ、小平太!そんなことないって」
からかわられる伊作さんの方を見ると目が合うが、伊作さんは照れくさそうに逸らした。
「…確かに、Aに何かあったら伊作が黙ってないように思われてるかも、もそ…」
「長次まで…!」
(私の知らないところでそんな風になっていたとは…)
伊作さんが先輩となれば真っ先に謝りに行く気持ちも分からなくはない、ような…?
と、留三郎さんにぽん、と肩を叩かれた。
「ま、黙ってないのは伊作だけじゃないかもしれないけどな?」
「え?」
留三郎さんの方を見ると、にかっと爽やかに笑いかけられた。
「さ、バレーの続きしようぜ!」
留三郎さんは向こうの広い方へ戻っていく。
「おう!」と小平太さんも追うように駆けてゆき、そのあとに文次郎さんと長次さんも続いた。
「…Aちゃん、本当に怪我してないんだよね?」
横から声をかけた伊作さんはいつもの心配した顔だ。
「はい。大丈夫です」
「そっか、良かった」
柔らかく微笑んで、伊作さんも向こうへと行ってしまう。
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加糖雪(プロフ) - 犬さん» コメントありがとうございます。お待たしてしまって申し訳ありません…また少しずつ更新していけたらと思うのでよろしくお願い致します! (2022年11月6日 0時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
犬(プロフ) - このお話の続きが楽しみです。更新楽しみにしてます。 (2022年3月24日 8時) (レス) @page27 id: f57686b26e (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - レン。さん» レン。さんコメントありがとうございます。学園の人達と関わっていく中で、夢主がどう変わってどういう選択をしていくのか見届けていただけると幸いです。今後もこの作品をよろしくお願いします…! (2022年1月16日 18時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - れなさん» れなさんコメントありがとうございます。感想をいただけてとても嬉しいです。ゆっくりとですが更新再開してますのでどうぞよろしくお願いします( ᵕᴗᵕ ) (2022年1月16日 18時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
レン。(プロフ) - これからの夢主ちゃんがどうなるのか気になります!!気長に更新待ってます! (2022年1月16日 4時) (レス) id: 6501380a5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年7月25日 4時