6-4 馬借と水軍 ページ36
「あそこの机なんですけど、俺だけ先に出るので」
「分かりました」
「これお代です。二人分」
お店の女の人は、お金を渡されてようやくAの顔からその視線を手元へ外した。
「は、はいっ。ありがとうございます。あ、あのお釣りは…」
「ああ、お釣りは彼に」
そのまま去ってしまいそうなAを女の人は慌てて、「ええと」呼び止める。
「何か?」
「その、今度、私と……」
「今度?ああ、また来ますね。ここのおうどん今日も美味しかったです。ご馳走様でした!」
「あ、あっ、ああ、ありがとうございました……」
だんだん小さくなる語尾が聞き取れなかったのか、もう言葉は途切れたと思ったらしく、彼女は最後まで言うことが出来ずAは良い笑顔で足早に店を出ていった。
いつまでもAの残像を追いかけるように、暖簾の方を見ている彼女のため息はどうも色っぽい。
ずずっと机でうどんを啜りながら、一連の流れを見ていた伊作はため息をつきそうになった。
(お気の毒に……)
残念なことに、あれでAは忍たまにしか興味が無いのである。
*
「お邪魔しまーす」
「あれっあなたは……」
「忍術学園五年は組のAです。一年は組の加藤団蔵くんからお手紙を預かって参りました」
指の先まで綺麗な所作でAは礼をした。
「Aさん!お久しぶりです」
「はは、良かったあ〜清八さんがいらっしゃって」
「若旦那からですね。確かに受け取りました」
「はい。どうやら学園長先生からの依頼についてのお手紙らしいです」
「それは大事なものを…ありがとうございます。ところでその荷物は?」
「あはは。今日は大忙しなんです。なので私はこれで」
「あっ、ちょっと待ってください!」
「?」
「ええと、その、……どちらまで行かれますか?良ければ、行き先までお送りさせて欲しいのですが……!」
手紙を持ってきてくれたお礼をさせて欲しいという言葉にAは甘えて、清八と一緒に馬に乗っていた。
「今日はお休みをいただいてるんです」
「へえ。ああ、だから団蔵は今日清八さんにって手紙を出したんですね」
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加糖雪(プロフ) - 乃花おむ子さん» 乃花おむ子さんこちらにもコメントくださりありがとうございます!ギャグに自信ないのですが笑っていただけて嬉しいです〜!こちらの作品はかなりゆっくりの更新になりますがよろしくお願いいたしますm(_ _)m (2021年9月25日 18時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
乃花おむ子(プロフ) - めちゃめちゃ面白くて笑いながら読んでしまいました……!無理のない程度に更新頑張ってください! (2021年9月24日 7時) (レス) @page27 id: 3538425ae0 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - まーぶりんさん» まーぶりんさんコメントありがとうございます!楽しんで頂けている様で何よりです…!応援ありがとうございます。今後も何卒よろしくお願いいたします! (2021年5月21日 20時) (レス) id: 22bc115167 (このIDを非表示/違反報告)
まーぶりん(プロフ) - ウッ…凄く好きです…!!ホント主様の文才が神すぎて…!更新楽しみにしてます( ゚д゚)頑張ってくださいー!! (2021年5月20日 17時) (レス) id: 045921842f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年5月12日 22時