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「頼んでたもの持ってきてくれたのね。ありがとう」
「いえ。手当ての方、よろしくお願いします」
「ええ。任せて頂戴」
山本さんは伊作さんから籠を受け取る。
「じゃあ僕はこれで」
伊作さんが障子を閉めるその時、ふと目が合った。
こちらに気がついた伊作さんがにこりと微笑みかけて、そのまま障子の向こうに消える。
(…変なの)
私にいくら優しくしたところで、向こうが得することなんか無いのに。
足音が遠ざかっていくと、山本さんは「さ、包帯巻きましょうか」と私を布団の方へ手招いた。
山本さんが敷いてくれた布団の上に座り、私は包帯が巻けるようにと寝間着を少しはだけさせる。
塗り薬を傷のある箇所(つまりほぼ全身)に塗ってもらった後、けがのひどい右手と左脚、それからお腹と両足に包帯が巻かれた。
「きつくないかしら」
「はい」
「じゃあ最後に顔ね」
山本さんの手が私の顔の方へ伸びてきて、そっと触れられる。
細くて白くて、女性的な綺麗なその手で、私の頬にガーゼが当てられる。
「よし。これで終わり」
「ありがとうございます」
私は山本さんに頭を下げた。
見ず知らずの人の手当てなんて、そんなに気が進むものでもないだろうにこの人は嫌な顔ひとつせずこなしたのだ。
ありがとうございますなんて言葉じゃこの申し訳なさは拭えないし、感謝の気持ちは伝えきれない気がした。
「いいのよ。早く治ってほしいもの」
「…」
「すみませーん」
「あら、何かしら」
障子の向こうからまた声がした。
私は慌てて寝間着をちゃんと着直す。男の人の声だったから尚更。
その間に、山本さんが立ち上がって障子の方へと行き、私が寝間着をちゃんと着たのを確認してから開けてくれる。
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年4月6日 16時