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「君はこの間、奇襲を仕掛けられて焼け落ちた村の生き残りだろう」
「……」
「私との会話では沈黙は肯定と受け取るルールにするけど、いい?」
「…はい」
仕方なく、私は返事をした。
「君が村で怪我を負い、それを忍術学園の保健委員会委員長、善法寺伊作くんに手当てをしてもらって、その後。
君は引き取ってもらった家に向かうと言って救護所を離れ、どこにあるかも分からない忍術学園を目指してひたすら歩いていただろう。
それも色んな人に忍術学園の場所を聞きながら」
私は驚いた。
この人は私の何をどこまで知っているのだろう。
頭は嫌な想像を止めない。
「だよね?」
雑渡さんは私の顔を覗き込む。
「…」
「沈黙は肯定、だけど」
「…」
身構えたまま、それでも私は黙り込んだ。
まあ雑渡さんの言うことは事実だ。肯定ということにされても構わない。
「…君があまりにも忍術学園を目指して歩くことをやめないから、君が寝ている間に忍術学園の近くまで運んだんだけど。覚えてない?」
「…運んだ?」
もしかして、もしかして。
あの時目が覚めて、眠った時と全く違う場所にいたのは。
神様が願いを叶えてくれたと思ったのは。
私が忍術学園に辿り着けたのは。
「あ、あの時の………雑渡さん、の仕業だったんですか…」
複雑な気持ちだった。
今思えば、あの時忍術学園に辿り着けなかった方がこんな面倒事にならなくて済んだのではないかと、そんな考えすらある。
けれどあの時。
“ここが忍術学園ならなんでも良い”と思ったのも、
“忍術学園に辿り着きたい”と神様に祈ったのも、
私で間違いはない。
紛れもなくあの瞬間、私は確かに忍術学園に行くことを望んだのだ。
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年4月6日 16時