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周りが見て安心するくらいにまで、一刻も早く身体を治そう。
___最悪、治せなくともそう振る舞えるようにしよう。


私はひっそりと心に決めると、箸をお盆に置いて手を合わせた。


「ご馳走様でした」


と、私が口にしたのとほぼ同時。




かなり勢いのある足音が聞こえてきて、それがこの部屋の前で止むのと一緒に障子が勢いよく開け放たれる。



スパーン!と気持ちの良い音がした。


「伊作!!いた!!」


気持ちの良い音とは裏腹に、障子を開けた深緑色の装束のその人_留三郎さんはなんだか険しい表情だ。



「留三郎?ど、どうしたの、そんなに慌てて…」

伊作さんが言い終わらないうちに、留三郎さんが叫ぶ。

「時間だ!」
「時間?」



保健委員のみんなは、それぞれ箸を持ったまま留三郎さんの顔を見てぽかんとしている。



「そうだ!授業が始まる時間だ!そろそろ始業なのに伊作が見当たらないどころか、保健委員全員の姿が見えなくて探していたんだ!」


ええ!?と保健委員全員がたちまち驚いた。



「もうそんな時間?!」
「早くご飯食べなきゃ…!」
「食器も食堂に下げなきゃいけないし…」

口々に言いながら、朝食の残りを慌ただしく掻き込んでいく。



学園の話をするに夢中になっていたからか、皆あまり箸を進めていなかったみたいだ。





その様子を見ながら、留三郎さんは(障子)に寄りかかってため息をつく。

「全く…」




物凄いスピードで全員が完食し、「ごちそうさまでしたっ!」としっかりあいさつをする。

「よし!急いで食堂まで食器を運んで、教室に向かおう!」

伊作さんの言葉に、「はい!」と声の揃った返事。



「伊作先輩!Aさんの分の食器はどうしますか!」
左近くんが焦り混じりに言う。


「食器なら自分で下げますよ」
私は皆に微笑みかけてみるが、伊作さんは首を振る。

「いや、Aちゃんは絶対安静って言われたでしょ。ここでゆっくり休んでて」

「俺が運ぶぞ」
「ありがとう、留三郎」
「これ以上話してる暇はない。早く行こう」

言いながら、ずかずかと部屋に入ってこちらへやって来た留三郎さんに、私は自分の分のお盆を手渡した。



留三郎さんが私の手からお盆を受け取るその時、
「ありがとう」
「…いえ」

留三郎さんが微笑んだのに、私は俯いてしまった。

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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年4月6日 16時

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