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「Aちゃんと一緒に食べようと思って」
「私と…」
「あっ、嫌だった?!それなら僕食堂に戻るけど…!ごめんね、あんまり考えてなくて…」

はっとしてから焦り出す伊作くんを見て、それから私はスプーンで残り半分くらいになった雑炊をすくった。


「…優しい人」


スプーンの雑炊を見つめながら私は小さく呟く。

「え?」
「いいえ、別に嫌とかでは…ないので…」

私は誤魔化すように少し笑って見せて、スプーンを口に入れた。


「そっか、よかった」

それじゃいただきます、と口にして、伊作さんは箸を持った。

「今日はサバの味噌煮なんだ。あのね、食堂のおばちゃんのご飯はすっごく美味しくて…」

楽しそうに伊作さんは喋り始める。
私は適当に相槌をうちながら雑炊を食べ続けた。

食堂の話でひととおり盛り上がったあと、伊作さんは何か思い当たったのか「あ」と言葉を漏らした。



「そういえばAちゃんの包帯とガーゼ、新しいのに取り替えさせてもらってたんだけど、きつくない?」

言われて私は自分の腕と脚の包帯を、見て、それからスプーンの握る手の甲でガーゼのある顎に触れてみる。

確かに、どちらも新しいものに変わっていた。

「はい、大丈夫です」
「かなり汚れてたから…勝手にごめんね」

私は申し訳なさそうに謝る彼に、人のけがを良くしようと思ってのことに謝る必要なんて、と思った。


「いえ、構いません。ありがとうございます…」
「や、えっとね、服に隠れる部分は女性の先生がやったから、そこも心配しないでね…?」

難しそうにそう言われて、私はやっと理解する。
少し顔が熱くなるのが自分でわかった。

「は、はい…」

何とか返事を返すと、しばらく伊作さんの顔が見れなくなった。



お腹と、足の付け根の近く辺りまで怪我があるから…

けど、元は忍術学園の保健委員が手当したものだ。
今更減るもんでもない。

本当に今更だ。私は…



「Aちゃんその怪我痛まない?」
「まあ…なんとか」

脚は火傷がひどいのかずっとヒリヒリとするし、右手もなんとか動かせてはいるがなんだかチクチクして痛くない訳では無い。
お腹も、動くと痛い。

けれど、そのどの痛みにも忍術学園を探して歩き回るうちに慣れてしまったみたいだった。

痛みは無視できる。


動き始めて最初の頃は痛みに動けなくて足を止めてそのままになったことが何度もあったなあとふと懐かしく思った。

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設定タグ:忍たま , rkrn   
作品ジャンル:アニメ
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加糖雪(プロフ) - Hanakoさん» ありがとうございます!^^ (2021年4月25日 21時) (レス) id: ac64387404 (このIDを非表示/違反報告)
Hanako - 面白い!! (2021年4月17日 18時) (レス) id: 1d8bf8714f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年3月31日 9時

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