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みんなの言う嫌な感じ、というのも私は感じないし、所詮マンデラ効果というやつだろう。
半ばあてつけに私は毎回美術室の中に背を向けて部屋を出てるし、備品だってこの前うっかり学校から借りてた乾性油のボトルを割ってしまっている。
それでも私の身には何も起きていないのだ。
これっぽっちの異変もない。
「放課後美術室に一人で行った生徒が倒れた」とか「美術室に行ったあとからよく怪我をするようになった」とか迷信にも程がある。
何ならボトルを割ってしまった乾性油の片付けの方がよっぽど面倒で、「どうするんですか呪われたら!」と怒られるのを考えたら断然顧問に報告する方が怖かったと思う。
「2人も部活あるんでしょ、そろそろ時間だから行くよ」
「ええ〜!?」
「待ってよ!」
私は友人二人を押し退けて教室を出た。
「じゃっ、また明日ね」
「うそ〜!?」
「き、気をつけなよ!」
背を向けて歩きながら、友人二人に手だけひらりと振って返事をする。
手にした鞄の中の画材が動いて擦れ合い、音が鳴った。
*
私はどうしても美術科に入りたかった。
将来、絵を描く職につきたいから。
誰よりも絵を描いて、名門の美大を出る。
未だ学歴社会のこの国では通っていた大学、場合によっては高校も重視される。
実力があればいいだとか、結局は人柄重視だとか、そんなのは建前なのだ。
それが全てとまでは言わないけれど、最初に見るのも最後に決め手となるのも学歴。
夢を叶えるためなら、私は。
だから、美術部は辞めない。
実力を高めるため。3年間真面目に部活に取り組んだという評価を内申書に残すため。
廃部になったとしても、私がもう一度部を作り直す。
「…どうしてみんな、こうまでして噂話を信じきってるんだか……」
私以外が皆、異様な程に怯えている。
思わず首を傾げながら、私はキャンバスに絵の具で色を乗せていく。
息を吸い込んでため息を吐く。普段誰も使わないからか、どうも埃っぽい。
美術室内にある水場から壁にかけて並べて立てかけた私の作品たちも薄く埃を被っている。
そろそろ掃除をしなきゃいけないか。
ものが多くて雑乱としている美術室の掃除は少々面倒臭いな、と思いながら、指先についた絵の具をエプロンの裾で拭った。
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加糖雪(プロフ) - ねむさん» ありがとうございます!続編でもよろしくお願いします〜! (2022年2月11日 4時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
ねむ - ひぇ〜!また更新されておる〜!!めちゃくちゃ良いデス!自分のペースで続編よろしくお願いします (2022年2月7日 22時) (レス) @page43 id: 38d2d0b865 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - ねむさん» ねむさんコメントありがとうございます!面白いですね〜どんな風に強くなっていくか、今後の展開に期待していただければと思います! (2022年2月7日 9時) (レス) @page42 id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
ねむ - 夢主、絵が命かけれるほど大好きなんですね!えと、絵を破かれたりしたら強くなる…みたいなことを妄想しました(><#) (2022年2月5日 20時) (レス) @page35 id: 38d2d0b865 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - るきー流季ーさん» るき―流季―さんコメントありがとうございます!絵師を目指していらっしゃるんですね。この作品をもって私も読んでくださる方を応援できるように頑張ります! (2022年1月30日 22時) (レス) @page23 id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星藍 海 | 作成日時:2022年1月20日 1時