第9輪 ページ10
『能力名って………』
「月下獣っていうんだ。」
今度はすぐに答えてくれた。
でも、敦くんの目はとても悲しそうだった。
今は触れないでおこう。
そう思った。
『敦くんは見たかわからないけど、私も持ってるんだ、異能力。』
『ねぇ、敦くん。この世界には異能力者ってどれくらいいるの?』
ブオッと風が吹いた。
今の風は何も教えてくれなかった。
敦くんは悩んでいるようだった。
また、困らせるようなことを言ってしまった。
「この世界にどのくらい異能力者がいるかはわからない。けど、このヨコハマだけでもたくさんの異能力者がいる。探偵社の他にね。」
そう、敦くんは教えてくれた。
どのくらいかはわからないけど、この世界にはとにかくたくさんの異能力者がいるということか。
『そっか、教えてくれてありがと!!ごめんね!こんな事で足止めてもらっちゃって。』
「大丈夫だよ。僕もAちゃんの異能見てみたかったな〜。」
敦くんがそう呟いた。
私の異能…
「いつか見せてあげるね!」
笑顔を作って敦くんにそう言った。
そして、また歩いていくととある路地裏があった。
そこから道路まで微かに風が流れている。
弱々しい風だった。
…なにか聞こえる。
立ち止まってその路地裏の方に耳を済ませる。
「Aちゃん?」
敦くんも私が立ち止まったことに気づいて足を止めた。
ヒューヒューと弱い風が私に伝えた。
______________助けて。
『っ…!!!』
助けなくちゃ!
急いで路地裏の方に向かった。
敦くんが私の名前を呼んでいるがそれどころではない。
助けてと聞こえたなら助けるしかない。
長い路地裏を抜けると広い行き止まりがあった。
そこで起きていたことは…。
『何してるんですか!?やめてください!!』
見覚えのある黒いスーツが男性に向かって銃を向けていた。
体には無数の殴られたような傷があった。
「なんだ貴様。」
黒いスーツがこっちを睨んだ。
銃を向けられていた男性のところに駆け寄る。
『大丈夫ですか!?多数の打撲。それ以外に傷は?』
今のところない。と男性は答えた。
この黒いスーツ…思い出してみれば見たことあるような…。
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作者名:ゆきれあ | 作成日時:2017年2月23日 22時