轟さん家の親子事情 ページ32
.
職場体験、当日。
ヒーロー科全体で最寄り駅へと集合した俺等は、この後それぞれの職場へと移動する。相澤先生の前へと集まったA組は、それぞれコスチュームの入ったスーツケースを手にそわそわと落ち着かない様子だ。
｢おはよ、デクくん。結局どこにした？｣
｢A君、おはよう！あ、えと……グラントリノさんのところにしたんだ。｣
｢グラントリノ？｣
｢うん。何でも、オールマイトの師だって。｣
俺の前方で揺れる緑の髪。ぽんと肩を叩き挨拶すれば、嬉しそうに返される。朝から元気そうでなによりだ。声のトーンを抑え気味に紡がれた名前に、自然と口角が上がる。グラントリノ、かつて雄英にて1年間のみ教師をしていた、高校生オールマイトの担任だった人。オールマイトの先代、志村菜奈の盟友だ。
オールマイトよろしくお茶目で、とても可愛らしい方なのだ。スパルタなのはさておき。俺も会ってみたいなぁ。
｢A君はどこにしたの？｣
｢俺？俺は…｣
｢全員ちゃんと居るか。｣
デクくんの質問に答えようとするも、相澤先生の全体への呼び掛けに口を噤む。デクくんの意識も自然と相澤先生の方へと向いていたため、結局俺の行き先は言えず。まあそんなに大事な事でも無いしいっか、とひとりごちる。
｢コスチューム持ったな。本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ。落としたりするなよ。｣
｢はーい！！｣
｢伸ばすな、"はい"だ芦戸。くれぐれも失礼のないように！じゃあ行け。｣
相澤先生の忠告に皆としっかり頷く。蜘蛛の子を散らすようにそれぞれの行き先へ足を運ぶ彼等を少し眺め、デクくんの方へと視線を戻す。彼はいつの間にか傍に来ていたお茶子ちゃんと2人、飯田君の方を見つめていた。そのまま声を掛けに行く2人を見送り、俺は一足先に改札をくぐる。今は駄目だ。なんて声を掛けていいのかわからない。下手な事を言ってしまいそうで怖かった。
｢……でけぇ。｣
思わずそう声が漏れた。仕方ないと思う、そこらのビルよりでかいのだ。事務所を見上げたまま、ぽかんと口を開ける。これがNo.2のなせる技か。
｢……A？｣
｢んぁ？あ、焦凍君。｣
呼ばれた方へと顔を向ければ、さっきの俺くらいぽかんと口を開けた焦凍君が居た。はろはろ、と片手を緩く振れば、はっとした様に駆け寄ってくる。犬かな。可愛い。
｢Aも親父んとこにしたのか。｣
｢うん。No.2だしね。｣
出入口へと歩を進めつつ頷けば、そうか、と頬を緩めて彼は頷いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 464人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
じゃがりこ(プロフ) - 続き楽しみにしてます！ (2018年11月4日 15時) (
レス) id: f3618771b7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねこ。(プロフ) - ゆーとさん» ああ、ごめんなさい！教えて下さりありがとうございます！ (2018年9月27日 15時) (レス) id: 819d312a56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーと - とても面白く、一気読みさせていただいているのですが、Re:インゲニウム�△�｢OはOでも〜｣とありますが、AOはA型、BOはB型になり、O型になるのはOOだけですよ (2018年9月27日 15時) (レス) id: f375cefe03 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねこ。(プロフ) - 瑞稀さん» ありがとうございますー！そう言って貰えて嬉しいです…！頑張ります！ (2018年4月30日 21時) (レス) id: 819d312a56 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - いいところで…！！！夢主くんの性格大好きです！！今後どーなるのか気になります！更新楽しみにしてます！！ (2018年4月30日 21時) (レス) id: be8945b53e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきねこ。 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年2月23日 2時
