中也さんの彼女は……… 2 (ページ21)

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其の七十ページ21

Nо side

谷「善からぬ輩ッていうと？」

今度は樋口が口を開いた。

樋「分かりません…ですが、襤褸(ぼろ)を纏って日陰を歩き、聞き慣れない異国語を話す者も居るのだとか」

それを聞き、戻った国木田が答える。

国「そいつは密輸業者だろう。
軍警が幾ら取り締まっても船蟲のように湧いてくる。
港湾都市の宿業だな」

貴「ええ
無法の輩だという証拠さえあれば、軍警に掛け合えます。
ですから」

語尾を少し強めるA。

国木田はフッ、と笑い、

国「現場を張って証拠を掴めか………」

そう言い、敦の方へ目を向けた。

国「小僧、お前が行け。」

突然の氏名に、驚きを隠さずヘッ！？と声を上げる敦。

国「何、只見張るだけだ。それに、
密輸業者は無法者だが大抵は逃げ足だけが取り柄の無害な連中……
初仕事には丁度良いだろう」

それでもまだ尻込みをする敦を見かね、谷崎に、一緒に行ってやれと指示を出す国木田。

ナ「兄様が行くならナオミもついて行きますわぁ」

甘い声でそういうナオミ。

貴「……それでは、頼みますね。」

Aは誰にも見えないよう密かに、ニヤリと笑った。