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九輪 ページ9

side urata

巳の刻(午前10時頃)

寝不足な目を擦り、覚束無い足で1階の食事部屋に入る。

「坂田!じっとしときゆうとるやろ!」

「ん〜、だって眠いんやもん…」

そんな見知った声が聞こえてきて、俺はその声の主に声をかけた。

「センラマン、坂田、おはよ。」

「うらたん、おはようございます〜」

「うらさん!おはよう〜!」

そう返すや否や、俺の方に近づいてこようとした坂田をセンラがぐいっと坂田の赤髪を引っ張り止めた。

「だから坂田動くなって!」

センラにそう言われると坂田はしゅんとして大人しくなり、センラも大変だな、と苦笑を浮かべる。

毎朝の恒例行事の一つ。
いつまで経っても髪の結い方を覚えない坂田をセンラが結ってやる。

他の妓楼にいる遊女達は、髪結屋や禿達に結ってもらうのだろうが、遊男なんてこの舗くらいだろう、結えるものも少ない。

俺やまーしぃは自分でも結えるけど、今は仲間内で1番手先が器用なセンラに一任している。

「センラマン後で俺もよろしく〜」

センラが返事をしたのを確認して自分の席に向かおうとすると、まーしぃが部屋に入って来た。

「まーしぃ!おはよう〜!」

それを見た坂田がまたもや立ち上がり、まーしぃの方に行こうとするのをセンラが櫛を片手に坂田の頭にチョップを落としてとめた。

「まーしぃ、おはよう」

「志麻くん、おはようございます〜」

俺達にまーしぃは気怠けに「おー、おはよう〜」とだけ返すと自分の席に座った。

それを見て俺もと席につくと、髪が結終わったのか俺の横に座った坂田が、向かいにいるまーしぃに「ねぇねぇ、まーしぃなんで今日遅いん?もしかして寝坊?」とさも人の弱みを握ったかのように楽しげに身を乗り出して聞いた。

それはいつものお前だろ、とツッコミたいのを寸前で抑えた。

確かにいつもならセンラ、俺、まーしぃ、そして寝坊する坂田の順で食事部屋につく。
今日は珍しく坂田が寝坊してないのもあるが、まーしぃにしてはいつもより遅い。

そんなことを考えていると、まーしぃが思っても見なかったことを口にした。

「俺今日風呂行ってたから。」

「えぇ?!お風呂?!」

坂田と同じく、俺も驚いた。

遊郭にいる遊女や俺達のような遊男は、風呂にゆっくり入るのは月に一度だけ。
普段は客が帰った後、軽く体を洗い流したり、拭いたりするのみ。

月に一度の髪洗い日に、普段洗わない髪を洗ったり、風呂にゆっくり入ったりするのだ。

だが今日はその日ではない筈。

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設定タグ:歌い手 , 浦島坂田船 , 花魁   
作品ジャンル:恋愛
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藍瑠(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!そう言って頂けて本当に嬉しいです。続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - ウルさん» ありがとうございます!嬉しいです、続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - 匿名希望さん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - Haoto-ハオトさん» ありがとうございます!更新不定期ですが、気長にお待ち頂けると幸いです! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - えゆさん» ありがとうございます!続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藍瑠 | 作成日時:2020年3月16日 20時

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