七輪 ページ7
思わぬチャンスに嬉嬉としていると、美沙子ちゃんが遣手に怒鳴りかかって驚く。
「それくらいいいじゃない!私たちが言ってるんだから!!それとも私たちの友達が信用出来ないって言うの?!」
「ちょ、ちょっと美沙子ちゃん、私は大丈夫だから、落ち着いて…」
美沙子ちゃんの剣幕に圧倒されながらこの場を収めようとするが彼女は全く聞く耳を持たない。
「そういう規則ですので…」
ぺこぺこと頭を下げる遣手に気の毒になってきた時、「なんの騒ぎだい?」と内証から一人の女性がやって来た。
遣手に内儀と呼ばれたその女性は、ことの成り行きを聞くと美沙子ちゃん達に申し訳なさそうに話しかけた。
「大変申し訳ないのですが、いくら花魁の馴染みである美沙子様方の頼みであろうと、遊郭のしきたりを破ることは出来ませぬ。」
「……わかったわ。日を改める。」
美沙子ちゃんは納得いかないようだが、この騒ぎに舗の外にも野次馬が集まっているのを見てそう言った。
(これで帰れる…!)
そう思った矢先、内儀が「お嬢?!」と叫んだ。
その声にみんながぽかんとしているのにも構わず、内儀は私の方にずかずかと近付いてきた。
(これはまずい……)
私は内儀から逃げるように舗を出ようとしたが、がし、と腕を掴まれてしまった。
「まさかお嬢から来て下さるなんて!
お嬢のご登楼を今か今かと待ちわびていたんですよ!」
「え、ええと、なんのことでしょう……」
精一杯のおとぼけをしてみるが、内儀は次々と話し続ける。
「お嬢が言って下されば、いつでも宴の準備ができますものを!この舞波楼、いや中原遊郭総出で」
「いや、私はただの町人の娘で……」
(駄目だ、誤魔化せない…)
すると美沙子ちゃんが私に「どういうこと?」と聞いてきた。あとの二人も不思議そうな顔をしている。
「さ、さぁ…?」
私はははは…、と笑って首を傾げた。
その反応を見て美沙子ちゃんは私が困っていることを察したのだろう。
内儀の肩を掴んで、「どういうことですか?」と聞いた。
「美沙子ちゃん、それは」
(やばい…!)
私は焦って止めたが、間に合わなかった。
「このお方は、ここ中原遊郭の一帯の地主、吉高様のご令嬢、A様なのです。」
(終わった…)
俯いている為、顔は見れないが周りから聞こえる声からして美沙子ちゃん達は困惑しているようだった。
(まぁ、それもそうか…)
私は彼女たちには、父は貿易商をしていると伝えてある。それが遊郭の地主の娘なんて……
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藍瑠(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!そう言って頂けて本当に嬉しいです。続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - ウルさん» ありがとうございます!嬉しいです、続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - 匿名希望さん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - Haoto-ハオトさん» ありがとうございます!更新不定期ですが、気長にお待ち頂けると幸いです! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - えゆさん» ありがとうございます!続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍瑠 | 作成日時:2020年3月16日 20時