六輪 ページ6
「えぇ?!Aちゃん、浦田花魁から煙管貰ってる!」
(最悪だ…。)
虚しくも茜ちゃんの大声に美沙子ちゃんも優希ちゃんも、そして周りにいた女性達もばっと私の方を振り返った。
「え、えぇっと…」
その視線から助けを求めてちら、と花魁の方を見るとにこりと微笑むだけ。
(他人事のように…!)
(う、視線が痛い…)
「あの浦田花魁が煙管を渡すなんて…」
「誰あの子」
「花魁を脅したんじゃないの?」
ひそひそと女性達に囁かれ、加えて頭から爪先まで品評するように見られる。
(なんで私がこんな目に……)
肩を縮こませ、悪足掻きでしかないと分かっているが出来るだけ目立たないようにしていると、優希ちゃんががし、と私の両手を握った。
「これはもう後には引けないね。」
するといつの間にか私の両側にたった美沙子ちゃんと茜ちゃんも目を輝かせてうんうんと頷いている。
「ちょ、ちょっと待って私は…」
私の制止の言葉も聞かず、3人は私の手を引いて舗に入った。
(終わった……)
我が物顔でずかずかと舗に入って行く3人は流石慣れている、というのか。
彼女達は土間から出てきた遣手に花魁を指名すると伝えた。
なんでも彼女たちはそれぞれ志麻花魁、坂田花魁、千羅花魁の馴染みの客なのだとか。
彼女たちがいつも指名している3人に加えて、私に浦田花魁を。
いくらなんでも中原遊郭四名郎を一気に指名するのは無理なのでは。
そう思ったが、遣手の腰の低い対応からするに彼女たちはかなりの太客なのだろう。
(一体どれだけ花魁に金を落としているのか…。)
やはり富豪にしか出来ない遊びだな、と半分他人事のようにその様子を眺めていると、遣手がおずおずと私に話しかけてきた。
「あの…新規のお客様は引手茶屋を通して頂かないと…。」
なるほど、そうか。
この遣手が言いたいことを要約すると、
彼ら花魁と遊ぶには一夜だけでもかなりの揚代がかかる。
そこいらの武士や町人には決して払える代物では無い。
万が一花魁と過ごした後、客が払えないなどと言って、未払いで逃げてしまったら舗にとっては大赤字だ。
そんなことを未然に防ぐため、高い揚代を払える客なのか、引手茶屋を通して確かめる必要があるということだ。
そもそも他の妓楼であったって、花魁程の高級遊女と床を共にするには、最低3回は通わなければならないはず。
それほど花魁というのは敷居が高い存在なのだ。
だけどこれは私にとってチャンスだ。
よし、これを言い訳に帰ろう。
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藍瑠(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!そう言って頂けて本当に嬉しいです。続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - ウルさん» ありがとうございます!嬉しいです、続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - 匿名希望さん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - Haoto-ハオトさん» ありがとうございます!更新不定期ですが、気長にお待ち頂けると幸いです! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - えゆさん» ありがとうございます!続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍瑠 | 作成日時:2020年3月16日 20時