二十五輪 ページ25
「お前…俺と寝たがる女がどれだけいると…」
「それ自分で言っちゃうんですか…。」
微塵も謙遜しない花魁にうわ、と顔を引き攣らせた。
(事実なのが腹立たしいけど…)
「というか、浦田花魁は別の部屋で寝てくださいよ…」
「いやここ俺の部屋だし。」
花魁は勝ったといわんばかりにふふんと笑った。
そうだ忘れていた、上級遊男である花魁の彼らは個人の部屋を持っているのだった。
そんな花魁にぐぬぬと顔を歪めるが、返す言葉がみつからない。
「じゃあ私が別の部屋で寝ます!」
そう言うや否や私は立ち上がり、出口を目指す。
「おいそれはまずいって…!」
後ろから花魁の制止する声がきこえるが、私はすたすたと歩みを止めない。
すかーん、と小気味の良い音をたてて襖を開けた。
開いた襖からずん、と勢い良く廊下にでて、満足気に廊下の中央に立つ。
すると最初に耳に入ってきたのは廊下に響く複数の嬌声。
「え…」
廊下に面する部屋からする隠す気も無い情事の生々しい音の数々に私は全身にぶわ、と熱が集まるのがわかった。
耳に途切れることも無く流れ込んで来るその声と音に、すっかり動揺して立ち竦んでしまった。
(ど、どうしよう…)
先程の威勢は何処へやら、廊下でどうすることも出来ず戸惑っていると、突如ぐい、と腕を引かれた。
そのまま後ろに体勢を崩してしまい、尻もちを着く。
「いたた…」
尻もちをついた時に打ってしまい痛む腰をさすると腕が伸びて私の顔の真横に手が置かれてぎょっとする。
顔を上げると花魁の端正な顔が目の前にあり、思わず生唾を呑んだ。
(う、わ…)
深碧の瞳に真正面から捉えられ、身動きがとれなくなる。
整った目鼻立ちは凛々しくもありつつ、何処か女性的な色気を含んでいた。
さっきも思ったが、彼はやはり花魁の格の高さを表すように、常人とは飛び抜けた美しさを持っている。
この顔に見つめられて顔を逸らせるものなどいるのだろうか。
そんなことを考えながら、花魁をじっと見る。
「だから言っただろ。大人しく俺と寝とけ。」
やれやれと言ったような表情で意味深なことを言う浦田花魁に、仕方なく頷く。
あの様子では何処へ言っても同じような状況だろう。
そういったことに全く耐性のない私には些か刺激が強すぎた。
疲れていた身体が更に重くなったように感じてぐったりとする。
浦田花魁に聞くところによると、この時間はもう遊男とお客さんがそういうことを始めているらしい。
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藍瑠(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!そう言って頂けて本当に嬉しいです。続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - ウルさん» ありがとうございます!嬉しいです、続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - 匿名希望さん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - Haoto-ハオトさん» ありがとうございます!更新不定期ですが、気長にお待ち頂けると幸いです! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - えゆさん» ありがとうございます!続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍瑠 | 作成日時:2020年3月16日 20時