十五輪 ページ15
内儀は張見世に出ていたまーしぃ、坂田、センラにも「あんたらも指名だよ!早くしな!」とパンパンと手を叩きながら言った。
内儀はいつもより明らかに気合いが入っている。
(これが吉高様効果か、)
その様子に唖然としていると、内儀が突然俺の両肩をがし、と掴み、ずいっと顔を近付けた。
「良いかい、何があっても粗相のないようにするんだよ。あの人は普通のお客とは違うんだ。まぁうちの看板であるお前なら心配いらないだろうがね。」
「あい、精進しなんす…。」
「よし、行きな。」そう言って内儀はばし、と俺の背中を勢いよく叩くと、台所へずかずかと入っていった。
恐らくこれからお出しする料理の指示を出しに行ったのだろう。
(今日の内儀の張り切り具合は気味が悪ぃな…)
俺は鏡台に向かって髪や着物の乱れがないか確認し、期待を持って客の相手をする2階へと上がった。
❉ ❉ ❉
俺は2階の数ある部屋から彼女が通されているという、俺の部屋の前に立った。
稼ぎの良い花魁にはそれぞれ個室が与えられる。この舗では俺、まーしぃ、坂田、センラの4人が自分の部屋を持っている。部屋持ちの花魁は自身の部屋で客をもてなすのだ。
しかし、普段なら部屋の前には必ず誰かいるものなのだが、部屋の前どころかこの長い廊下のどこにも人が見当たらない。
大方、禿も弟男郎達も妙に気合いの入った内儀に駆り出されているといったところか。
特に不思議にも思わなかった俺は部屋の襖の前に膝を着いた。
「主さん、今宵お
・・・
(返事がねぇ…)
普通ならここでお客から入る許可を頂くのだが、部屋の中からはなんの返事もない。
「主さん?入ってよろしいですかえ?」
尚も返事がないことにムッ、とした俺は「失礼しなんす。」と襖をガラッと明け、強行突破した。
「…は?」
思わず間抜けな声が出てしまった。
中にいるはずのお客がいないのだ。
屏風の向こうも入り口からは死角になる部屋の奥も探したが、部屋は正真正銘もぬけの殻だった。
「おいおい、どうなってんだこれ、、部屋間違えたか?」
自分が置かれている状況を理解出来ず頭をがしがしとかいたとき、部屋の端に置いてある机の上に何かのってあるのが視界に入った。
「俺の煙管…と、紙切れ?」
そこには、先程彼女に渡したはずの煙管とそれを文鎮替わりに紙切れが置いてあった。
紙切れには何やら書いてあるようで、その文字を読もうと顔を近づける。
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藍瑠(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!そう言って頂けて本当に嬉しいです。続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - ウルさん» ありがとうございます!嬉しいです、続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - 匿名希望さん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - Haoto-ハオトさん» ありがとうございます!更新不定期ですが、気長にお待ち頂けると幸いです! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - えゆさん» ありがとうございます!続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍瑠 | 作成日時:2020年3月16日 20時