続・ヤンデレな好青年に捕まりました。

45話　彼の奥底 ページ1

「あーあ、どうしてこうなった」

弁当を食べながらため息を吐いた。

横から美穂が私の卵焼きをつまみ食いしながら話しかけた。

「ぼーっとしてるからでしょ」

「接客とか無理、買い出しでも何でもするから裏方がいい」

「もう決まっちゃったんだから諦めなよ」

「そうそう。俺、Aの袴姿すごく楽しみだよ」

「愛想のない女に接客されても嬉しくないでしょ」

「滅多に見せてくれない笑顔にぐっとくるんじゃないか。それに普段見れない服装のAを見れるだけ
で俺はとっても嬉しいよ」

「あっそ」

眩しいものでも見たかのように目を細めて、心から嬉しそうにでも少し恥ずかしそうに笑う慎哉に何
故だかこっちが恥ずかしくなった。そんな顔を見られるのが嫌で顔をそらした。

「でも、そんな可愛いAを大勢の人に見られるのは少し不愉快だなぁ……」

ぼそりと慎哉が何か言ったような気がして、そらした顔をもう一度、慎哉に向けた。

たまに見ることのあった、冷ややかな慎哉の瞳にゾクリとした。底の見えない真っ黒な瞳。

私の視線に気が付いたのかパッといつもの笑みを浮かべ首を傾げる。

「どうかした？」

「……なんでもない」

私はコイツの何を考えているのかわからないところが一番怖い。

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