粗雑な音 ページ32
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言葉が出なかったのは、その答えを持ち合わせていなかったからでは無い。
答えがある上で、きっとそれは宿儺が求めているものじゃないと悲しいくらいに察してしまったからで。
｢どうして、俺なんかを助けた。｣
宿儺は、二度同じ意味を持つ言葉を口にした。
いつもは自分の軸をしっかりと持つ彼が、言葉に悩み、その緋色をゆらゆらと浮かべるその姿は何とも重々しい。
頭がふわふわとして、難しいことはあまり分からない。
それでも、今目の前の彼が何かしらに苦しめられていることだけは痛いくらいによくわかる。
｢……助けるよ、そりゃ｣
｢……。｣
｢大切な人を助けるのに、理由なんていらないでしょ。｣
ニコリと、安心させるように微笑んでみせたが、彼は未だに凝り固まった表情を崩さない。
寧ろ、先程から私が笑顔を見せれば見せるほど、彼の顔色が曇っているような気さえする。
｢お前は、女だろう。｣
｢関係ないよ。｣
｢傷が残ったらどうする。｣
｢んー……。｣
宿儺の骨ばった手が、サラリと私の前髪を避けて包帯の上を滑った。
殴られたのはおでこあたり。別に、傷が残っても気にならない場所なのに。
｢……あ、｣
思いついたような声に、宿儺がピクリと反応する。
頬を撫でていた手をそのまま滑らせ、彼の目元をなぞった。
｢宿儺とお揃い……、なんちゃって。｣
重たい空気がどうにも堅苦しくて、無邪気に笑って見せたつもりだった。
そんな私の計らいを知ってか知らずか、宿儺も未だ泣き出しそうな目は変わらずとも。
｢……阿呆か、お前は。｣
口の先だけは笑ってくれたのだ。
───……その後もぽつりぽつりと、まっさらな紙面に水滴を落とすように私達の会話はゆっくりと続いた。
あの後、駆けつけた警察によりあの三人は捕まったとのこと。
そしてほぼ同時にやってきた救急車に運ばれ、私達はここへ来たらしい。
宿儺は、入院してるお爺さんにドヤされたと苦い顔をしていた。
｢…………A｣
｢んー？｣
｢その……、あの、だな。｣
モゴモゴと口を動かしては、宿儺は言葉に詰まった。
何か言いたいのだろうと私は待ってみるが、なかなか口は開かず。
そうして、重なる沈黙に耐えかねた頃になって、宿儺の口が開いて。
しかしそれは、遠く鳴る粗雑な音によって弾かれてしまったのである。
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眠民。 - 完結おめでとうございます!!私は虎杖ガチ勢(既視感)なのですが、ゆきさんのお話がきっかけで宿儺沼にもハマりかけています‥!受験生なのに神作品ありがとうございました!頑張ってください!!応援してます~!! (11月26日 14時) (
レス) id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
シロツメココロ - 完結おめでとうございます！ ゆきさん小説が私の宿儺推しに目覚めさせてもらったキッカケです。もう、宿儺小説を読み漁って漁って……次回は夏油さんですか！頑張ってください。受験…私も来年通る道です。応援しています (2021年3月17日 18時) (レス) id: a3d2b1e1b5 (このIDを非表示/違反報告)
琴吏(プロフ) - 完結おめでとうございます！！ゆきさんの書く宿儺と悠仁が大好きです、、泣 宿儺が幸せな恋を描いて下さりありがとうございました！ (2021年3月17日 14時) (レス) id: 94ce9bc83e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ちっぷさん» ちっぷさん！コメントありがとうございます！！前も言ったかもしれませんが、ちっぷさんは宿儺メインを書くきっかけになった方と言っても過言ではありません！新たな可能性を与えてくれて本当に感謝してます！最後までお付き合いありがとうございました！ (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 麦茶さん» 麦茶さん！沢山のコメントありがとうございます！！とっても励みになりました！やっぱ皆宿儺様好きなんだなあって……笑 こちらこそ、貴重なお時間をこのお話に割いて頂けて嬉しいです！！ (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆき
| 作成日時：2021年2月25日 23時
