【呪術廻戦】双子の弟がいるとか聞いてない。【両面宿儺】

火のないところに ページ20

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───虎杖弟との会話は、意外にも気苦労なく続いた。


一杯だけでいいと頼まれた珈琲も底を尽き、私の食べていたワッフルも無くなり。一瞬だけ訪れた無言には怯えたが、停滞した空気を打ち破ったのは意外にも虎杖弟の方であった。


俺が怖くないのかと尋ねられ、怖くないと答えた。

あんな目にあわされたのにか？と問いかけられたから、助けてくれたのは君でしょ、と返して。





｢私ね、人を見る目だけはあるんだよ。｣




だから、多分。私の直感が言うには、




｢───私は、周りが言うほど嫌な奴じゃないと思うよ。｣






私の言葉に拍子抜けしたのか、虎杖弟は少しだけ言葉に詰まって。
ふん、と鼻を鳴らしてはそっぽを向いた。何だか見覚えのある反応だ。






｢でも一つ気になるのはさ、あの噂は本当なの？｣


｢噂？｣





そうそう。引っかかるのはこれ。

今のところの私の解釈では、あの噂は到底本当だとは思えない。が、火のないところに何とやらとも言うし。






｢定期的に病院に出入りしてるんでしょ？誰かを病院送りにしてるとか……｣


｢あれは爺さんの見舞いに行ってやってるだけだ。悠仁と週替わりでな。｣





……なるほど。確かにそれなら病院を出入りする姿が見られても仕方ない。





｢警察にお世話になってるって言うのは？｣


｢警察……？……あぁ、うちの高校は治安が悪いからな。偶にコンビニで万引きしようとしてるやつを見るから、しょっぴいたりはしてる。｣





｢前にお前を襲ったのも俺が警察に突き出した奴らだな｣と虎杖弟は続けた。おい待てそれってつまり逆恨みじゃないか。しかもお前悪の親玉みたいななりしてめちゃくちゃいいことしてるな。






｢じゃあ、その傷は？｣


｢傷？｣


｢目の下の…………って、ごめん。聞かれたくなかったら、｣




今の話を聞くに、多分こいつは悪いことなんてしてない。喧嘩の噂も、売られたから買う、程度のそれなのだろう。

もしその傷が、何かしらの理不尽な暴力によるものだったら──





｢…………小さい頃、｣


｢ん……？｣


｢小さい頃、悠仁と喧嘩した時にガラスを割ってな。

……俺は気にしとらんが、彼奴は随分と引きずっててな｣




｢だから彼奴の前ではあんまり言うなよ。｣と窄んでいく声に、今度は私の方が拍子抜けしてしまう。





｢……ふふ、そうなんだ。｣





悠仁。あんたの言う通り、良い奴じゃないの。




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