【REBORN】雪の灯火part2 (ページ34)

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70話ページ34

(side A)

3月下旬

おじいさまに教えて頂いたある場所に行くために、ベルと共に森の中を歩いていた

私が顔を強張らせていたからか、ベルは繋いだ手を静かに引いてくれた

手元の花束だけが静寂の中で音を立てていた

森を抜け、開けた場所に出た

無数の花が咲き誇る草原

そこに２つ並んだ灰色の石の板

刻まれているのは最愛の人たちの名

そう、今日は私の両親が亡くなった日

ベルと一緒にお墓参りに来たのだ

本当はおじいさまやCEDEFの皆さんと来る予定だったが、おじいさまが「ベルフェゴールくんと行ってきなさい」と言うので、お言葉に甘えさせてもらった

優しく吹く風が黒いワンピースを揺らす

ゆっくり、ゆっくりとお墓の前まで歩を進める

込み上げてくるものをぎゅっと飲み込みながら震える足を踏みしめた

優しく握られた手を静かに離す

私の揺れる瞳に気付いたのか、ベルが心配そうに見つめていたが、私の思うままにさせてくれた

お墓の前に膝をつく

持っていた花束を2人に手向ける

深く息を吸い込み、掠れた声をやっと発することができた

『…お母さん、お父さん。遅くなってごめんなさい、やっと来ることができました』

力の入らない手を握りしめる

『私、私ね、ボンゴレに来れて幸せです。おじいさまをはじめとした、たくさんの方々が私にいろんな幸せをくださるんです』

少し後ろにいるベルを振り返る

彼はいつもとは違う、静かな笑みを浮かべていた

『大好きな人にも出会えました。だから、私は大丈夫ですよ、安心して、ッ…ください…』

視界が揺らぐ

2人を安心させるためにここに来たというのに、

(2人を、心配させちゃダメなのに…意味ないじゃないですか…)

いくつもの涙が頬を伝う

感情が高ぶり本音がポロリポロリと溢れていく

『ッ！もっと、もっと一緒にいたかった…笑いたかった…ッ、抱き締めて、ッ欲しかった……ッなんで、私を置いて、逝ってしまったの…お母さんッお父さんッ』

顔を覆って泣きじゃくる

シトラスの香りが鼻をくすぐり、抱きしめられた

ベルの胸を私の涙が濡らしていく

(ああ、別の言葉を伝えたかったのに)

私は

2人の子供に生まれてよかったと

たくさんの愛をありがとうと

…絶対に忘れないからと

伝えたかったはずなのに

風が強く吹き、花束から紫の花弁が舞った

(私の代わりに、2人に届けて)

変わらぬ心、途絶えぬ記憶を

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2人に贈ったのはスターチスという花です