杖に魅いる２【ハリーポッター】 (ページ35)

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第35話ページ35

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『ここ登って』

建物の横に取り付けられたハシゴ。
コケとか錆とか、そんなものがついていた。

「こんな汚いところ、登れるはずがない！見ろ。僕のローブが汚れる。ブランドものだ」

『そっか』

Aがそう言うと、僕の体はたちまち浮かび上がり、雑に屋根へと叩きつけられた。

「うっ…」

『杖がないから正確に持ち上げられないの。ごめんね』

悪気のなさそうな声。
しかし貸そうと伸ばしてくれた手。起き上がると汚れのついた部分を払ってくれた。

「屋根に登ったのは初めてだ。父上に怒られないといいが」

『バレなければいいのよ。見て』

目の前を見ると夕陽が輝いていた。

そこまで高い場所でもないので、遠くはあまり見えないがマグルの世界の建物であろうものもチラッと見えた。

その綺麗さに、落ちないよう握ってくれていた手にギュッと力を入れた。

『魔法使いは魔法が使えるけど、マグルは使えない。』

「だからマグルは無能だ」

『違う。ないものの代わりに、知識や経験から新しいものを生み出すの。魔法がないのに発展して来たのよ。』

「それってとてもスゴい」彼女の目が生き生きとしていた。ホワイトブロンドが夕焼けで赤く反射していた。

彼女の言葉には変に説得力があって、だんだん自分も同じことを思って来た。

『血って関係ないのよ･･･』

僕の世界を広げてくれた。

「ではお気を付けてマルフォイさん」

「ああ。2人とも今日は世話になったな」

「ドラコ」

何だか別れが寂しく思えた。
しかしまた会えると聞いたので、きっと遠くないうちに会える。

母上が名前を呼び、手を繋いでくれた。
チラッと振り向くと、Aが手を振っていた。

ブランドものの服を自慢しても無反応だったくせに、今だけはなぜか羨ましそうな目でこちらを見ていた。