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渡せない恋文。 ページ1

貴方様へ

 ごきげんよう。とでも書いておいた方が宜しいのでしょうか。
私はあの時の女学生でございます。

これは誰にも見せられない、勿論貴方にもお渡し出来ない。
私だけの恋文でございます。

女は学を身に着けてはならないという時代。
親が建前を気にして入れた私立のお嬢様学校でございます。

私共の学校ではいち早くセーラー服を取り入れました。
黒いセーラー服に血の滴るように赤いリボンが首元を彩ってくださります。

学のある女は縁談が来るのも早いのでしょうか。
父上様は政略結婚の事ばかり考えております。

私が貴方を愛してしまったのは、まだ肌寒い秋の事でございます。
貴方は皺なく学ランを着こなしていらして、
私が落とした頭飾りのあの、リボンを拾ってくださいました。

恋に落ちるとはこういう事をいうのだと、知りましたわ。

それから、私は何も出来ずに貴方に拾って頂いたリボンをいつも身に着けて幸せに一人浸っているのです。

 貴方様の事を考えるだけで幸せなのです。
どうしてなのでしょうか、これが恋なのでしょうか。

私は密かに想いお慕いする事しか出来ない。
ただの女学生でございますわ。

夢にも、貴方様に触れたい、お話をしてみたいなんて、
きっと幸せが私の小さな胸に沢山入ってきて、
しんでしまいますわ。

嗚呼、恐ろしいこと。

貴方様はお花はお好きなのかしら。
好きな色は、どんな顔で接吻をするのでしょう。

嗚呼、否だわ、私とした事が、はしたないですわ。

ごめんなさい。

私は今、胸の高鳴りをやっと抑えて、
お気に入りの椿模様の万年筆でこの手紙を書いておりますの。

黒い万年筆に真っ赤な椿が浮き上がっていて、うっとりしてしまう程素敵なのでございますわ。

駄目ね、今日の私はあまりにも浮かれすぎてしまって、うまい言葉が書けません。

そろそろおやすみなさい。

また、書きますわ。


恋する女学生より

渡せない恋文。二通→



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設定タグ:オリジナル , 手紙風 , 短編小説   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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ロサ・ラピスラズリ(プロフ) - するふぁ@givehappinessさん» ありがとうございます!! (2019年10月28日 7時) (レス) id: 18eae7edc1 (このIDを非表示/違反報告)
するふぁ@givehappiness(プロフ) - あ、すき。うまく言えないけど、すき。 更新頑張ってください。応援してます。 (2019年10月28日 2時) (レス) id: 7f5dee56dd (このIDを非表示/違反報告)
ロサ・ラピスラズリ(プロフ) - Noel*26さん» ありがとうございます!!手紙風に書く小説ってあまり見かけないなあっと思って書いたのですが、喜んでとらえて良かったです。 (2019年10月27日 9時) (レス) id: 18eae7edc1 (このIDを非表示/違反報告)
Noel*26(プロフ) - なにこれ、なんなのこれ、めっちゃ好き。応援させて下さい( ^ω^) (2019年10月27日 9時) (レス) id: 3a6dfc07f6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ロサ・ラスピラズリ | 作成日時:2019年10月26日 16時

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