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｢どうして私を選んでくれたの？｣
1度ふうまさんにそんなことを聞いたことがある。
｢Aこそ、歌の返事書かなくていいの？｣
｢……ふうまさんより素敵な歌なんて見てないもの｣
歌の返事を書くこと、それがどんな意味を表しているのか分かっているくせに。
｢意地の悪いのことを言うんですね？｣
結局、私の質問には答えてくれない。
私がまだ知らない方法があるかもしれないけれど、会いに来る許可を与えることは 、即ち殿方さえ嫌でなければ3日後には祝宴をあげる予定だ。
……ずっと私たちはお話しているだけで時間が経過している。
｢……いつか、簾の向こう側を一緒に見たい｣
｢どこへでも連れていくよ。Aがそれを望むのなら｣
とびきり優しい笑顔でそう告げたふうまさん。どんな噂を聞いていたのかは知らない。
だけどふと思ってしまったの。
私 この人と離れたくないって。
｢また来るね｣
いつも通り、そう告げて 帰ろうとする彼の袖口を引いた。
しようと思えば、いつだって出来たはずだ。
でも 彼はずっと私の気持ちを尊重してくれていた。
私の中で、彼を拒む理由が見つからない。
一途に思い続けてくれたふうまさんのことを
好きにならないはずがなかったの。
･
眠りが浅いと悪夢を見ると聞いたことがある。良質な睡眠をとれるように、いろいろ工夫してみても 結局 夢のおわりはいつも同じシーン。
途中までは良くても “ 良い夢 ” と呼べない。
毎晩私が死ぬ間際、苦しげな彼の表情は目に焼き付いてはなれない。
菊池先輩とは、あれから話していないけれど
少し思うところがある。
私がいくら睡眠の質を改善しようとしても
きっといつまでも同じ夢を見る。
作戦、結局何も思いついてないけど
やっぱり真正面からぶつかるしかない。
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作者名：ゆき
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2021年8月22日 22時
