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DY side
「……ヘチャニが前に、俺に向かってさ」
「うん？」
「“俺は自分の意志であの人の背中を追っかけてるんです”って、言ったの」
…ヘチャンが？
…え、ヘチャンがAヌナを… え？
ちょっと待て、いきなりの告白に頭が追いつかないんだけど。
でも無駄に突っ込んだところで、話の趣旨が逸れてしまいそうだ。…ここはぐっと呑み込む。
自分の意志で、か。
なんにせよヘチャンらしい一言、だとは思う。
テヨンイヒョンは、自嘲するように口角を上げた。
「俺はどうしたいんだろう、って 考えるようになったんだ。その時から」
「…」
「例えば此処を出て、外の世界で生きる。自由に仕事して、恋愛もして、家庭を作る。他にも趣味に没頭するとか、外国に行くとか」
「…」
「……けど、俺にはそれが魅力的には思えなかった」
「ヒョン…」
「…あのひとに、呪われてるのかな。あの人無しじゃ生きていけない呪い。……Aさんが居ない人生は、絶対につまらない気がする。あのひとが俺の人生に居るのは、当たり前なんだよ」
「…ヒョンがそこまでしてヌナを思うワケはなんなの？」
「え？」
「一体過去に何があって、そんなに深い関係になったんだよ」
「……おれ、Aさんが居なかったら死んでたんだよね」
「え？」
「名前すら無かったし」
「……え？」
待て待て待て。
さっきから急展開の連続だぞ。
テヨンイヒョンは俺を見つめたあと、
子供のように吹き出して 笑った。
柔らかな金髪が宙に浮く。
…久々に、どこか安らかなヒョンの姿を見た気がした。
「誰にも話したこと無かったけど」
「え…？名前って、え、どういうこと？」
「俺、捨て子だったんだ」
「………そうだったの？」
「物心ついた時には、もう路上に居て。ほんと、貧困層が集まる地域の乞食だったんだけど」
「…衝撃…」
「ははっ！素直な反応だな(笑)」
男娼の間で昔から密かな噂になってたのは、
実はテヨンイヒョンはどこかの王家の血を引く末裔だとか、外国のわけありな貴族だとか、とにかく高貴な身分の出身なんじゃないかってこと。
だってこの容姿に加えて、詩に舞に絵、芸術分野にも秀でた才能を見せるから
只者じゃ無いことくらいはすぐに分かる。
それがまさか、
…捨て子だったなんて。
決して軽い話では無い自分の歴史のはずなのに、テヨンイヒョンは特に気にする様子もなく、話を続けた。
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rurueru - このお話は本当に書籍化して欲しいぐらいお気に入りです。これからも長く続いてほしいですがこの願いははたまた、、、 (2021年2月24日 22時) (
レス) id: cf29b96430 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - もう5年くらいいろんな方の作品を読んでいますがTOP3に入るくらい好きな作品です。終わりが近づいていてとても惜しいです、、 (2021年2月20日 23時) (レス) id: dce001e485 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月
| 作成日時：2021年2月19日 22時
