占いツクール
検索窓
今日:213 hit、昨日:671 hit、合計:101,025 hit

_ ページ17

.



揺れるテンの前髪が、私の額にも当たって
芳しい彼の香りが 鼻腔に漂う。


彼は、まるで子猫のように 私の頬に彼の頬を寄せた。


肌が触れ合う、その瞬間に

心を駆け抜けていく 甘美な苦痛。













「…キミは、普通の女の人じゃない」


「そして、ボクも」


「…そうだったね」











…テンの頬まで、濡れちゃった。


しっとりした感触と共にすぐそばにある、
彼の横顔を見上げる。



つんと上向いた 特徴的な鼻先が

まるで自由を謳歌するように 青空へ溶けていた。




頬に触れれば、私をちらりと一瞥して
目を細める姿が愛らしい。


化粧なんて施されていない彼の、
今だけは 切れ味を失った瞳。





ふふっと微笑んで、私を抱きしめる。


私の頬に、口づける。




そして、昔話をする大人のような 瞳の色をして


薄い唇を開いた。











「…Aちゃん」


「…」


「ボク、恋をした」


「…!」


「…恋、してたんだ」









そっと、私から体を離す。






着物の襟から覗く真っ白な肌に刻まれた、誰が付けたのかも分からない紅い印が 私を睨みつけてくる。



優しく微笑んだまま 不安げに私の手を握りしめて


またその瞳は 空の彼方を探し始めた。









「…運命だ、と思った」


「その目を見た、瞬間、今までの女の人と、全然違うって思った」


「ウソつけなかったんだ、ボク。花魁なのにね、花魁じゃなくて、チッタポンとして、その人と、抱き合ってた、気付いたら。……とっても、幸せだった」


「あんな感覚、久しぶりだった。あんな風に、あのコのこと、考える。それだけで、幸せ。そう思った」


「嬉しかった。でもね…」










私がテンに身を寄せれば、

彼は私をぐっと抱き寄せ 瞳を閉じる。



苦悶の表情を浮かべたがっているけど
その語り口は 妙に落ち着いていて


恋とか、愛とか そんな馬鹿馬鹿しい戯れ言も
彼が言えば どこか現実味の無い
ふわふわと浮いた 幼い頃に読んだ御伽噺のような

そんな情緒を纏って 私の耳に降りかかる。





その言葉尻が、嬉しそうなのに


とても 寂しそうだ




















「すっごい、好きだったよ」



「でもね、」



「好きになれなかったんだ」


















テンは


微笑んでいた。













.

_→←_



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (143 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1004人がお気に入り
設定キーワード:NCT , K-POP
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ray - 一昨日この作品を見つけ一気読みしました。主人公の揺れる思いに胸が苦しくなります、、。これから主人公とテヨン(テンも?)がどうなってしまうのか続きが気になります。大変だとは思いますが頑張ってください!更新首を長くして待っています^^ (1月15日 18時) (レス) id: 3feffcfcf6 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:如月 | 作成日時:2021年1月14日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。