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彼はまた 自らを嘲笑うように
口角を少しだけ上げて見せた。
私の心臓を深くまで貫くような苦しみが、
彼の手のひらから 伝わってくる。
私が無意識のうちに、その筋肉質で細い体を抱き締めれば
テンは私を見下ろして 優しく微笑んで
…なんだか、寒そうに
私の体を ぎゅっと抱いた。
「あのコは、とってもキレイ。顔だけじゃないよ。全部、とってもキレイだ。だから、こんなにキタナイ、ボク。触れたら、ダメ。…分かってるんだ」
「好きだけど 好きになれない」
「あのコに会える時間、とても嬉しい。だけど、苦しい。なんでだろう、フフッ」
「…それに、あのコには、ジェミナが居る」
「でも、理由、それだけじゃない」
「ココを、離れるでしょ。もし、ボクがダレかを愛したら。ココだけじゃない。キミを、離れるでしょ」
ずっと、空を自由に舞う鳥の姿を追っていたテンの視線。
今、その先には
真紅の楼。
彼は空虚へ微笑みかけ、
私の頭に 彼の頭を傾ける。
「…そんなコト、出来ない。思ったんだ」
「キミとココを、ボク、離れられない」
「それがきっと、ボクの本心」
「ボクはもう、チッタポンじゃないんだね。…花魁の、テンなんだね」
「ボクは、遊郭でしか生きられない。みたいだ」
幼き彼が、此処へ足を踏み入れた日。
…今よりも少し、肉付きが良くて
笑顔がとても愛らしくて
お茶目で、悪戯好きで
突飛で芸術的な発想と観点の持ち主
摩訶不思議な言動もするけれど
懸命な努力家で 仲間思いの優しい少年。
いつからか 彼は
自分の運命を受け入れ 覚悟を決め
お客様からは蛇と称されるような、
殺気すら感じるような色気を放つ
一流の花魁へと 成長した。
それを昇華と呼ぶべきか、堕天と呼ぶべきか
私は怖くて 決められない。
「Aちゃん」
「今夜は、ボクのところ。…来てほしい」
誰もが持て囃す 妖艶でしなやかさ
押しも押されぬ 絶対的な花魁。
そんな彼の、本当の素顔は
なんだか かつての彼の面影を残したままのように優しくて、柔らかくて、私をどこまでも受け入れてくれるようで
色々な哀しみや、諦めを
二人ぼっちで 慰め合う。
…それが、私とテンを繋ぐ唯一の線。
彼の言葉に頷けば、
彼はその鋭い目を 優しく細めて
私の顎を優しく掴みながら、
後頭部を引き寄せた。
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むうみん - これもしかして、、ジェミン編もテヨン編とと同じ時間軸、世界線に存在してますか？面白すぎる、、いろんな主人公の視点で見れますね。官能的だし、すきです。言葉も難しいの多くてすごい、、応援してます (2021年3月14日 17時) (
レス) id: ad7920768e (このIDを非表示/違反報告)
ray - 一昨日この作品を見つけ一気読みしました。主人公の揺れる思いに胸が苦しくなります、、。これから主人公とテヨン（テンも？）がどうなってしまうのか続きが気になります。大変だとは思いますが頑張ってください！更新首を長くして待っています^^ (2021年1月15日 18時) (レス) id: 3feffcfcf6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月
| 作成日時：2021年1月14日 17時
