第五場 ページ37
.
「ようこそ…っ、御出下さいました」
やっぱり震えている声。
思わず、声を出して笑ってしまった。
今すぐ泣き出しそうなほど、
私を見上げる瞳は 潤んでいて
…抱き締めたくなるって、こういうこと？(笑)
「おっ…久し、ぶりです…」
「ふふ、久し振り」
「ううっ… また噛んじゃいました…」
「あははっ、ジョンウくんらしい(笑)」
「えっと、次は… あっ、ご案内、しなきゃですね。えっと、どうぞ！」
本人は小声で言ってるつもりなんだろうけど、思いっきり聞こえてる。
彼なりの精一杯だ。見守ろう。
それでもやっぱり、立ち上がると
彼も立派な男性なんだな、と感じる。
私の頭よりずっと高いところにある小さな顔、
長い脚。思いのほか しっかりした肩幅。
特徴的な高い声と柔らかな雰囲気、月明かりに照らされる柔らかな横顔は とても中性的なのに
近距離で感じる体格差に、違和感を覚える。
…即ち、彼も御多分に洩れず 魅力的だということ。
お酒を用意する手が震えてる。
…絶対にこぼすでしょ。(笑)
余りにも心配だから、私は微笑んで 口を開いた。
「ね、ジョンウくん」
「はいっ！」
「ふふ、なんでそんなに緊張してるの？(笑)」
「しっ…失敗は、出来ないなって…」
「そんなこと考えなくていいよ。…お客は、ジョンウくんに完璧な時間を求めてるんじゃなくて、ジョンウくんとしか過ごせない時間を求めてるんだから」
「……」
「変に繕わないで。そのままのジョンウくんでいいんだと思う」
我ながら、何か偉そうなことを語ってしまった。
それでも、こんな言葉がすらすら出てくるほど
“遊郭”という 浮世離れした世界に 慣れてしまったようだ。
少しだけ、切ないような、寂しいような。
だけど、ジョンウくんは私の言葉を聞いて
…やっと、微笑んでくれた。
「…すみません。ちょっと、緊張しすぎてたみたいです」
「うん、知ってたよ(笑)」
「ごめんなさい…(笑) ……うん、もう大丈夫だ」
そして、ようやく
私のことを真っ直ぐと見つめてくれた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 948人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「NCT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きむロン - なにこれえッち！！！やだ恥ずかしい！！！（） (2021年3月19日 10時) (
レス) id: 687bfe2f8c (このIDを非表示/違反報告)
ひかるちゃん(プロフ) - 遊郭と韓国アイドルの世界ってなんだか似てるなって思いました (2021年1月25日 2時) (レス) id: a4b03772ec (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 既視感があると思ったら3年か4年前に読んでい方の作品にまた出会えて本当に感激です泣ありがとうございます！ (2021年1月3日 3時) (レス) id: 7a2ecf4d8f (このIDを非表示/違反報告)
獺 - 焦がれるほどお待ちしておりました。再び貴方の文学に触れられると思うと眦が熱くなるような気すらします。素晴らしいあなたと、素晴らしいあなたの文学が本当に大好きです。 (2020年12月20日 11時) (レス) id: 5140f050ee (このIDを非表示/違反報告)
理沙 - 文字から伝わってくる色気が凄いです…。風景が簡単に浮かんできます。設定もそれぞれに合ってて、（特にテンちゃんのキャラ最高です笑）全員がどんな風に出てくるのか今からとても楽しみです。 (2020年12月18日 21時) (レス) id: ba6de82bf1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：如月
| 作成日時：2020年12月17日 17時
